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豊田章男社長を取材し続けた筆者が思う、退任の本当の理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

トヨタ自動車の豊田章男社長が、退任を発表した。ここ数年、豊田社長を追いかけてきた筆者から見たさまざまなこぼれ話を書いていこう。 筆者が思う、退任の本当の理由は……。

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 既にニュースが駆け巡っているので、今さらご存じないという人もいないだろうが、トヨタ自動車の豊田章男社長が、退任を発表した。後任はレクサスカンパニーとGRカンパニーのプレジデントを務める佐藤恒治氏である。


左から豊田章男社長、佐藤恒治執行役員、内山田竹志会長(出典:トヨタ自動車、撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 さて、他のニュースが追いかけているこまごまとしたファクトを書いても、仕方がないので、ここ数年豊田社長を追いかけてきた筆者から見たさまざまなこぼれ話を書いていこう。そういうエピソードの向こう側に、退任までのインサイドストーリーが見えてきたらいいなあと。

 こういう機会なので、ちょっと書き手としての抑制を外して、いろいろと本音で書いてしまおうと思っている。筆者は普段からトヨタ寄りだの何だの言われることは多いが、実はこれでも本人は、トヨタ寄りになりすぎないようにセーブしているつもりなのだ。今回の原稿では、公平性よりも、エモーションが伝わることを優先したい。それは退任ニュースゆえの話である。

表向きは内山田竹志会長の退任がトリガーだが……


4月1日付予定の人事(出典:トヨタ自動車)

 公式には内山田竹志会長の退任をトリガーとして決まったことと発表された。それはそれでうそではないだろうが、豊田社長はことあるごとに、「こんなに長く社長をやるとは思わなかった」と繰り返してきた。14年前、着任早々に北米の公聴会に向かう機上では、引責辞任やむなしの思いの中で、1年にも満たない短い社長任期を覚悟したと述懐している。これは複数回聞いている話でもある。

 豊田章男という人は一部から大きな誤解を受けているが、決して権力欲の強い人ではない。社長の椅子にだって特別しがみつきたいとは思っていないし、一部でしつこく蒸し返される経団連会長への執着も、実態としては全く逆である。むしろ本人の美意識としては、世俗的な名誉職である経団連会長など、ごめん被りたいと強く思っているのだ。

 だからこそ豊田章男社長時代のトヨタは、可能な限り政治と距離を置いてきたし、本当に必要になるまで、経団連に自動車関連の部会を設けようとはしなかった。実は経団連側は、長年にわたりトヨタの積極的参加をずっと熱望してラブコールを送り続けてきたが、むしろトヨタはそれから逃げ回ってきた。

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