百貨店はこのまま消えてしまうのか 「いや、復活できる」これだけの理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
百貨店が苦しんでいる。新型コロナに伴う行動規制が緩和されたことによって、どん底からは浮上しているわけだが、楽観できる状況ではない。百貨店が生き残るためには、どういった手を打てばいいのだろうか。幅広い層を狙うのではなく……。
金持ち向けか、庶民向けか
今、スーパー銭湯や日帰り温泉施設の中には、マンガやリラクゼーションスペース、おいしいレストランを備えて、若者から人気になっているところも多い。そのような集客力の高いエンタメ施設を併設すれば、「若者離れ」が叫ばれる百貨店に、若い層を呼び込むこともできるかもしれない。
実はそのような施設がかつて浅草にあった。1959年から72年にあった「新世界」である。
この巨大な施設の中には、温泉浴場だけではなく、ホステス500人が働き、歌謡ショーなどを魅せる劇場キャバレー、そして室内ローラースケート場や屋内遊園地などさまざまなエンタメフロアがあったことから、「娯楽のデパート」と呼ばれた。
この新世界を今の時代に合った形で、復活させてみてはどうだろう。娯楽は金持ちも庶民も求めるものだし、温泉や競馬、野球、ゲーセンはもちろん、ラウンドワンのスポッチャのようなアミューズメント施設や、お笑い劇場などさまざまな娯楽に特化した「現代の新世界」をつくれば、老若男女が集い、そのついでに併設された百貨店に幅広い層を呼び込むことができる。
いずれにせよ、これだけ貧富の差が広がった今の日本では、価格的に幅広い層が利用できるデパートというのはもはや成立しない。
金持ち向けならば徹底的に敷居を高くして、庶民は近づけないくらいにすべきだし、庶民向けならば徹底的に「娯楽」と「安さ」を打ち出して、イオンモール以上に俗っぽくしていくべきだ。
百貨店が存続していくために必要なのは、「どちらかを選んで、どちらかを切り捨てる」という勇気なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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