高齢者住宅を、どのように評価すべきか:売却のリスクも(1/3 ページ)
高齢者向けの分譲マンションはまだ数が少ないために、評価の観点や基準も共通の認識がなく、相場といったものが形成されていません。このような状態だと、例えば売却しようとする際に、思わぬ低い評価をされてしまう危険もあり、一定の合意形成は大切だと思います。
著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
先日、あるシンクタンクから「高齢者向け分譲マンションの資産価値について意見が聞きたい」という依頼がありました。
高齢者向けの分譲マンションはまだ数が少ないために、評価の観点や基準も共通の認識がなく、相場といったものが形成されていません。所有者や検討者、不動産業者、金融機関によってその評価がバラついているのが実態なのでしょう。このような状態だと、例えば売却しようとする際に、思わぬ低い評価をされてしまう危険もあり、一定の合意形成は大切なことだと思います。
とはいえ、モノに対する評価は人によって大きく違います。骨董(こっとう)品などを見れば明らかなように、コレクターにとっては垂ぜん物であっても、それをガラクタにしか感じない人もいます。高齢者住宅の価値は、それを使う高齢者のニーズに連動するべきであって、ファミリーマンションと並べて評価するのはナンセンスというもの。若い人たちには価値があっても、高齢者にとってはどうでもよいことがありますし、その逆もあるからです。
ファミリーマンションは「駅からの近さ」「学区」「階数」「眺望」「日当たり」「広さ」「間取り」「設備・仕様の質」といった観点で評価されます。しかし、高齢者には毎日の通勤や通学はありませんから、駅からの距離や学区には意味がなく、従って「立地」の良しあしに関する評価は、若い人とは全く違います。
また、若い人は広い家の方がいいでしょうが、年を取ると広さは面倒につながりますし、高齢者世帯には3つも4つも部屋は必要ありません。仕様や設備も、豪華さより、安全や分かりやすさが重要です。高齢者はコミュニティー(交流やつながりを通した安心、楽しみ)を重視する傾向にあるので、専有部より共用部、ハードよりもソフト(サービスやコンテンツ)が関心事となります。そもそも、若いファミリーには「家が欲しい(所有したい)」というニーズがありますが、高齢者にそんなニーズはほぼありません。
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