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きっかけは父の強烈な一言 パナ社員が開発した新型「調理家電」は介護食をどう変えるのか:食べることをあきらめない(3/5 ページ)
病気や障がいなどにより、噛む力や飲み込む力が低下してしまった人と、その介護をする家族の願いをかなえようと開発された調理家電がある。パナソニック発のスタートアップ企業であるギフモ(京都市)が手掛ける「デリソフター」だ。
デリソフター誕生のきっかけ
デリソフターは、開発担当者である水野時枝さんと小川恵さん、それぞれの実体験から生まれた。鹿児島で生まれ、大家族の中で育った水野さん。116歳まで長生きした水野さんの祖母は、家庭料理をとても大切にしていたという。「家族みんなが同じ食事を食べられることの喜びがずっと心の中にありました」(水野さん)
小川さんは嚥下障害の父親を介護した経験を持つ。普通の食事が食べられなくなった父親のため、忙しい合間をぬって1日3食の介護食を作る日々。しかし、ミキサーやすり鉢でペースト状にした介護食を作るには想像以上に手間がかかること、時短のため市販の介護食を活用しようにも、かなりの出費になり使いづらいことなど苦労の連続だったという。
「ある日、父が介護食を前にして『こんなエサみたいなものを食べてまで、生きてる意味がない』とつぶやいたんです。それを聞いた時、『こんなに手間もお金もかけているのに』と思ってしまいました。当時は、父を思いやる余裕もありませんでした。本来楽しいはずの食事の時間が苦痛で仕方なかったです」(小川さん)。いきなり食べる喜びを奪われた人、介護食を作り続けなければならない人の悲しみや苦労を痛感したという。
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