「10円パン」に大行列! “韓国を真似ればヒット”の法則は本当か:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
「大王チーズ10円パン」をご存じだろうか。10円で買える激安パンではなく、500円で買える巨大な10円硬貨型のスイーツのこと。韓国発の商品で、若者を中心に人気が集まっているのだ。韓国のモノやサービスを真似れば、日本でヒットする傾向があって……。
冒険しない日本企業
ご存じのように今、日本ではなかなか「ヒット商品」が生まれににくなっている。「貧しい人でも買える安い商品・サービスを提供する企業こそが素晴らしい」というデフレマインドが強くなりすぎて、企業側はリスクをとって新しいチャレンジができない。10円のお菓子や30円のチョコが何十年も値上げしないことが「賞賛」「感動」と美談になる国で、「現状維持志向」が過度に強くなっているのだ。
そんな「冒険しない日本企業」にとって、「韓国国内での成功モデルをもってくれば日本でも大コケしない」というのは非常に魅力的に映って、なりふり構わずみんなでパクってしまうのだ。
分かりやすいのは、「ヤンニョムチキン」だ。この甘辛だれを絡めた唐揚げは韓国では国民食ともいうべきほど定着しており、日本でも数年前からやはり新大久保起点でブームになった。こうなると当然、居酒屋など日本の外食でも続々とこれを真似し始める。それを支えていたのが、エバラ食品工業が業務用として発売している「エバラ ヤンニョムチキンのたれ」だ。
これは唐揚げに絡めるだけで、人気のヤンニョムチキンが提供できるということで多くの外食で扱われ、21年には日本食料新聞社が主催する第25回業務用加工食品ヒット賞まで受賞した。
さらに、ヤンニョムチキンの真似はそれだけにとどまらず家庭用まで広がっていく。韓国シェアトップの「王マンドゥ」で知られる「bibigo」(CJフード)の冷凍食品「甘辛ヤンニョムチキン」などもスーパーに続々と並ぶようになっていくと、日本の食品メーカーも続々と真似ていく。
例えば、「ヤンニョムチキンの素」を発売したモランボンのプレスリリースを見れば、この「ブーム」に便乗しようという企業が多くいることがうかがえよう。
『ヤンニョムチキンの認知度は2012年7.8%から2021年35.8%と約10年で5倍の伸長が見られました(弊社調べN=824)。また、ヤンニョムチキンは韓国フライドチキン専門店だけでなく、コンビニエンスストアやスーパーマーケットの総菜売場、外食店にも広がりを見せています』(モランボン社 2022年1月18日)
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