三井物産も解禁「副業ブーム」は到来するのか? “生涯一社主義”が崩れゆく理由:働き方の見取り図(1/4 ページ)
大手総合商社の三井物産が副業を認めたと報じられ話題が集まった。「素晴らしい」「いい流れ」などと評価する声がある一方で、「賃金削減の一環では」といった冷ややかな声も。今後、副業解禁の波はどんどん広がっていくことになるのか。
民間の会社だけでなく地方自治体が副業人材を募集するなど、副業推進の事例を目にすることが徐々に増えてきています。大手総合商社の三井物産が副業を認めたというニュースも、一斉に各メディアが報じました(「三井物産、副業解禁 ユーチューバー、画家も可」1月30日、時事通信)。
一連の報道には「素晴らしい」「いい流れ」などと評価する声がある一方で、「賃金削減の一環では」といった冷ややかな声も聞かれました。今後、副業解禁の波はどんどん広がっていくことになるのでしょうか。
副業はこれまで、タブーのように見なされてきたところがあります。学校を卒業して就職したら、その会社に生涯勤め上げるのが当然であり、副業して他の会社と接点を持つなどというのは裏切り行為のように見られる節がありました。そんな“生涯一社主義”を美徳とする価値観の会社は、いまも少なくありません。
ところが昨今、“生涯一社主義”をよそに副業推進の事例が目に留まるようになってきたのには、大きく2つの背景があります。
副業推進の機運が広まった2つの理由
1つは厚生労働省がモデル就業規則を変更したことです。副業に関してはモデル就業規則の順守事項の中に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」と記載されていましたが、2018年1月にその一文を削除して規定を新設し「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」との文言が加えられました。
この変更によって、副業は会社の許可が要るものから、会社の許可に関係なく従事できるものへと制度上の前提が180度変わったと言えます。そしてもう1つ大きなきっかけだったのは、19年に当時の経団連(日本経済団体連合会)会長が「終身雇用はもう守れない」と発言したことです。日本を代表する経済団体が終身雇用の維持に消極的な見方を示したことにより、会社は生涯にわたって社員を守ってくれる存在とは言えなくなりました。
これら2つの出来事は、“生涯一社主義”の価値観を根底から揺るがすインパクトがあったと思います。そして働き手に「他の会社で自分が通用するか試してみたい」「終身雇用が無理なら転職も視野に入れておく必要がある」などの意識変化をもたらしました。
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