三井物産も解禁「副業ブーム」は到来するのか? “生涯一社主義”が崩れゆく理由:働き方の見取り図(2/4 ページ)
大手総合商社の三井物産が副業を認めたと報じられ話題が集まった。「素晴らしい」「いい流れ」などと評価する声がある一方で、「賃金削減の一環では」といった冷ややかな声も。今後、副業解禁の波はどんどん広がっていくことになるのか。
そんな働き手の意識変化を反映した兆しは、あちこちで感じられます。テレビでは求人や転職サイトなどのCMが頻繁に流され、職業紹介やリファラル採用など転職斡旋(あっせん)サービスの種類も増えてきました。
それらは、働き手の中に新たな職場や可能性を求めるニーズが存在していることの表れであり、いまや新卒学生でも、入社当初から転職を考えているケースは珍しくありません。副業についてもかつてのように隠れて行うようなイメージから変わりつつあり、副業先で活躍する様子が堂々とメディアで取り上げられるようになってきています。
副業の3つのメリットとは?
しかしながら、三井物産の副業解禁がニュースになったように、副業を認めている会社はまだ珍しいのが実情です。日本生産性本部が発表した「第12回 働く人の意識に関する調査」によると、23年1月時点で副業を行っていた人は7.4%に留まります。一方、将来的に副業してみたいと考えている人は39.8%。働き手の希望に現実が追いついていない様子がうかがえます。
世の中には「本業だけでも大変なのに、副業なんてしたくない」「副業するくらいなら休みたい」と思う人もいます。確かに、副業すれば仕事の負担は増えてしまいます。にもかかわらず、なぜ副業を希望する人がいるのでしょうか。その理由は人によってさまざまだとは思いますが、少なくとも副業には3つのメリットがあります。
(1)他社での仕事を通じて技能の可能性を広げられる
(2)本業以外から付加的収入が得られる
(3)他社との接点が増えることで転職のきっかけが得られる
副業を希望する人にとっては、仕事の負担が増える大変さよりこれらのメリットの方が上回っているということです。しかし、副業を認めたくない会社にとって、社員が他社と関わりを持つことはあまり気持ちが良いものではありません。副業を通じて社員の心が自社から離れてしまう不安があったり、(3)のように副業から転職につながってしまう可能性があったりと、会社としては社員という大切な財産が奪われてしまいます。
それこそが、“生涯一社主義”の価値観を根底から揺るがしかねない重大な意味だと言えます。“生涯一社主義”が前提だと、社員は会社にとって独り占めできる専有財産です。しかし、副業を認めれば“生涯一社主義”の前提が崩れ、会社にとって社員の位置づけは専有財産から社会の共有財産へと変わります。
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