日本のキャンピングカー文化は定着するのか:高根英幸 「クルマのミライ」(6/6 ページ)
キャンピングカー市場が伸びている。街中でもよく見かけるようになったが、なぜ購入する人が増えたのだろうか。今後の行方は……。
日本独自のキャンピングカー文化は根付きつつある
日本のキャンピングカー需要は、前述のように欧米とはその傾向が異なる。リタイヤして悠々自適の生活、という層は似通っている部分もあるかもしれないが、生活の中でアウトドアに重きを置いている日本人はそれほど多くない。
パートナーの片方はアウトドアが好きでも、もう片方がインドア好きであればテント宿泊は難しい。そうした人たちに、キャンピングカーはピッタリなのだ。
さらに日本には宿泊施設とは別の温泉施設(宿泊施設でも温泉のみ利用できるところもある)が豊富にあるため、それらを訪ね回るような旅にもキャンピングカーは好都合だ。「宿の手配など旅の予定を細かく決めるのがストレス」「のんびりと動き回りたい」といった人にとっては、いきあたりばったりでも何とかなるのも強みだろう。
ストレスと言えば、地方移住がコロナ禍によって加速したイメージもあるが、都会育ちの人間にとって地方はストレスから解放される場所とは限らない。移住を歓迎している自治体でも内部には異論を唱える人がいて、短期間のお試し移住では見えてこないこともある。
そんな心配もキャンピングカーによる短期滞在なら、無用となる。問題は都会を離れて地方に住みたいのか、別荘を持つのは贅沢(ぜいたく)だからの移住なのか、ということだ。地方に住みたいのであれば、新参者らしく地域のルールには従う必要がある(もちろん移住者を受け入れたい自治体の意識改革も必要だ)。しかし別荘ほど贅沢ではなく制約も少ないキャンピングカーであれば、自宅はそのままに自分に合った地域を探し当てるまで日本中をさまよえるのだ。
災害時の一時避難スペースとして、キャンピングカーを購入した人もいるようだ。タワマンの高層階で暮らしていて、電気や水道が止まれば生活することが難しくなる。そうした人たちにとっては、防災手段のひとつとしてアリなのかもしれない。ともあれ日本のキャンピングカー保有台数は、まだまだ伸びていく余地が十分にある。ビジネスとして大いなる可能性を秘めているカテゴリーと言えるだろう。
筆者としてはキャンピングカーオーナーやキャンパーには、最近問題になっている道の駅や高速道路のSA・PAでの利用に際して、車中泊のマナー向上をお願いしたいところだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。
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