「ステマ規制」によってどうなる? 担当者の“冤罪”が多発する日:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
2023年秋、消費者庁による「ステマ規制」が本格的にスタートする。この規制によって、どのようなことが起きるのか。マーケティングやPRの担当者は戦々恐々としていて……。
企業の担当者は戦々恐々
では、こういう「グレーな話」を消費者庁はどうジャッジするのかというと、明確な基準は今のところ存在しない。
プレゼントやサンプルであっても安ければセーフなのか。試供品を受け取った消費者側に、SNSで投稿する際には「これはPRです」と入れるように呼びかけていなければすべてアウトなのか。こうしたルールがないので、消費者庁は個別に判断していく。
これは冷静に考えると、恐ろしいことではないか。
担当者の裁量によって左右されるということなので、極端な話、担当者と信頼関係のある企業はお目こぼしされるかもしれないし、過去のトラブルなどで悪いイメージのある企業などは現場判断でステマにされてしまう恐れもある。
今回の規制によって、消費者庁は「法律に縛られない警察」のように自分たちの気分次第で、企業や個人をステマでしょっぴくことができる、という絶大な権力を握ることになるのだ。
つまり、企業の広告・マーケティング担当者からすれば、いつ消費者庁からステマのレッテルを貼られるか分からない「暗黒時代」の始まりとも言えるのだ。
……というような政府への批判をすると、筆者の悪口を投稿したくなる、愛国心あふれる方も多くいらっしゃるかもしれない。しかし、そんな方たちこそ、今回のステマ規制のターゲットにされてしまう恐れがあるのだ。
先ほどの日本通信販売協会も懸念を示しているように、今回の規制の主体は、企業だけではない。団体、学校、病院、宗教団体などあらゆる組織のほか、なんと個人まで含まれるのだ。
政治家が消費者庁に圧力をかけて、自分の悪口を触れ回っているようなジャーナリスト、インフルエンサー、社会起業家などの個人に狙いを定めて、ステマという別件でしょっぴくことも可能だ。つまり、「ステマ冤罪」によって社会的信用を失墜させるなんてこともやろうとも思えばできてしまうのである。
「素晴らしいじゃないか、これで日本を貶(おとし)めるようなデマを流すようなマスゴミも一網打尽だ」と喜ぶ人も多いだろうが、反権力的な人だけが狙われるとも限らない。
例えば、SNSユーザーから「反日」「親中」なんて悪口を言われているような政治家が「デマを流す人」を一掃するために「ステマ規制」を利用するなんて可能性もゼロではない。
自民党の中にも、そういう誹謗中傷被害にあう政治家がちょこちょこいる。今回のステマ規制を急ピッチ進めている河野太郎氏もその1人だ。
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