「それは君の仕事だろっ、何とかしろ!」からの脱却:何ともならない時代(3/3 ページ)
日本企業における調達購買部門への対応の代表的な取り組みが「何とかしろ!」でした。 しかし、昨年頃から「何ともならない」状況が続き始めています。「何とかしろ!」の発想からは何も生まれません。経営トップからの意識改革が必要となります。
こういうやり方を、納期が間に合わない「何とかしろ!」のケースでは調整してきたのですが、今は、どの企業も入手困難の状況は同じであり、他社に優先して、自社の供給をお願い、というのは、通用しない状況になってきてます。
また、原材料の高騰についても、製品転嫁できないから「何とかしてくれ」の対応は既に困難となり、自社の売価への転嫁が求められるようになったのです。
「何とかしろ!」では「何ともならない」時代になりました。経営トップや調達部門長は意識を変えなければなりません。
原材料高騰に対しては、全社で協力し、顧客への値上げを説明し、理解してもらい、売価への反映を行っていかねばならないでしょう。そのためには、営業部門だけでなく、調達購買部門や物流部門、生産部門や原価管理部門などの協力が必要になります。また、そのための体制整備や意思決定のための仕組みづくりが必要となるでしょう。
供給不足や納期遅れに対しては、日頃からサプライヤに有利に扱ってもらうための関係性づくりや、代替品採用の意思決定のスピードアップ、新規開発段階から調達性の良い部品の採用などを全社で取り組むための仕組みづくりなどが、必要となります。
このように、2023年は「何とかしろ!」からの脱却を進めていく時期になるでしょう。既に企業業績を見ると早期に「何とかしろ!」からの脱却ができ、サプライチェーンを柔軟に構造改革する準備を進めている企業も少なくありません。多くの企業がこの旧態からの脱却のため、「何とかしろ!」的な発想からの意識改革から進められることを、期待してします。(野町 直弘)
著者プロフィール:野町直弘
慶應義塾大学経済学部卒業後、大手自動車メーカーに就職。
同社および外資系金融業にて調達・購買実務および、調達部門の立上げを経験。コンサルティング会社にて調達・購買、ロジスティック、BPR、SCM等のプロジェクトを担当。ベンチャー系WebインテグレーターでC.O.O(最高執行責任者)およびB2Bチームの立上げを行う。その後独立しアジルアソシエイツを設立。
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