相次ぐ賃上げ表明は、いよいよジョブ型賃金時代の到来か:ありがたい話なのか(2/3 ページ)
大企業を中心に賃金アップの表明が相次いでいる。もはや給与アップができることが一流企業の証であるかのような雰囲気ですらある。当然これは働き手にとっては大歓迎の話だ。 しかし、本当にビジネスパーソンにとってありがたい話なのだろうか。
この「役割や責任などを明確にした人事制度」「職種によって基本給の差を設ける職能給」が、まさに「ジョブ型賃金」というものだ。
これまで、年功序列からジョブ型への移行という声があったにもかかわらず、なかなか進まなかったのだが、ここへきての給与アップの流れは、「ここはチャンス」とばかりに、一気に「ジョブ型賃金」へと移行するチャンスなのだろう。
ジョブ型賃金とは、たまに誤解されていることではあるが、成果主義とはまた異なるものだ。
成果主義とは年功序列と違って成果によって評価し、それで給与を決めていくというものだから、現在の企業の大半で行われていることだ。
そしてジョブ型だが、ジョブディスクリプション(職務記述書)という仕事の内容を記したものをもとに、仕事や責任の範囲を決めたうえで、職務等級や報酬額を決めるというやり方だ。欧米企業に勤務したことがある人なら普通にあるもので、もちろん年齢や家族構成は関係ない。
採用のロジックでいえば、たとえば「営業部長」が退職し、誰かを据えようとするとき、日本企業であれば何人かの営業課長から昇格させるというのが通常だが、外資系企業でふつうにあることは、その営業部長のポジションには外から採用し持ってくる。要はそのポジション、役職に賃金をつけ採用するのがジョブ型ということだ。これはスタッフレベルでも同じことで、その採用権限はそのチームのリーダーにあることが多い。
つまりその人の行っているジョブに対して給与を決めるということになる。経験や学習によって、人は成長するものだが、一度自分の職務が決まってしまうと、なかなかそこから脱するのは難しい。それもそうで、1年や2年の月日でビジネススキルが急に伸び、成果が大きく変わるというのは考えにくい。
なので、そういう意味では査定もあまりない。ジョブ型の導入をがんばれば昇給できる制度と考えている人にとっては厳しい現実かもしれない。
また、現実問題として、組織の多くは8:2の法則あるいは9:1の法則が成り立っており、少数の人が大部分の利益を上げていることが多く、本当に、職務に応じてのみ給与を決めるとなると、年収5000万もいれば、200万もいることになってしまう。それをうまく緩和してきたのがこれまでの日本型の給与だったわけだが、社員は本当にジョブ型賃金を受け入れるのだろうか。
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