「中身が見える冷蔵庫」が好調 なぜ開発したのか:「背伸びせず使える冷蔵庫」も(2/6 ページ)
新潟県燕市の家電メーカ「ツインバード」が開発した最新の冷蔵庫は、ドアに触れると開けなくても中が透けて見える。使いやすい冷蔵庫が生まれるまでの歩みを、企画・開発担当者にうかがった。
ムダな買い物、買い忘れの防止
「中身が見える冷蔵庫」は誕生に4年の時間を要した。企画とデザインを担当した開発本部企画デザイン部の神成(かんなり)紘樹氏は、企画の経緯を次のように話す。
「買い物の際、まだ冷蔵庫に残っているのに買ってしまったり、逆に買い忘れてしまったりすることがあります。外から中が見えればこうしたことは防げることから『中身が見える冷蔵庫』を企画しました」
ドアを開けなくても庫内が見える冷蔵庫のアイデアは以前からあり、開発を進めたことがあった。ただ、なかなかうまくいかなかったという。以前開発に関わっていた、開発本部企画デザイン部 部長代理の岡田剛氏は次のように振り返る。
「一般的な冷蔵庫に窓をつけて中が見えるようにする企画を進めていたことがありました。冷蔵庫は結露対策と省エネ基準の達成を両立させなければいけないのですが、窓をつけると省エネ性能が落ちるのが悩ましかったです」
企画を引き継いだ神成氏は、現在採用されている方式を検討した。開発着手時はまだ理論上可能という段階で、実現可能か、実現できても機能が担保できるかどうかについては、開発を進めてみないと分からなかった。
冷蔵庫は容量ごとに幅・高さ・奥行がほぼ決まっており、当初は標準的なサイズでつくろうとした。だが、中が見える仕様が実現できても、標準的なサイズでは庫内の上のほうが見えなかったり、奥にあるものが分からなかったりすることが懸念だった。
なぜこの懸念を抱いたのかというと、社員の冷蔵庫の中を見せてもらったり、写真に撮ってもらって使用状況を確認したりすると、決してキレイとは言えない状態だったからだ。神成氏の言葉を借りると「冷蔵庫が食品を管理する箱として機能していなかった」――。
その理由をユーザー観察とアンケートから探ったところ、最大の理由は冷蔵庫の高さと奥行にあるという結論に達した。棚の奥にいつ買ったのか分からない食品が入っていた、上の棚をまったく使うことができていない、といったケースが多々確認された。
こうして「中身が見える冷蔵庫」はサイズを見直し、より多くの人に使いやすいものに変更した。誰にでも使いやすいサイズにすれば中身が見える機能がなくても付加価値が高いことから、同社は「中身が見える冷蔵庫」と同サイズで「背伸びせず使える冷蔵庫」もつくることにした。
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