「すしテロ」よりも注目すべき、外食チェーンの“本気の改革”:働き方の「今」を知る(1/4 ページ)
「安くて早くてうまい」日本の外食チェーン文化は、機械化・自動化などを用いた地道な企業努力で実現してきたものだ。昨今の、顧客による迷惑行為はこれらを根底から揺るがしかねない。この記事では、外食チェーンの努力を紹介することで、飲食業界を応援する。
2023年に入って以降、外食チェーン各店における迷惑行為動画の炎上騒動が相次いでいる。
ちょうど10年前にも、「バイトテロ」「バカッター」などと呼ばれる迷惑行為の炎上騒動が日本中を騒がせたことがあったが、当時の動画・画像投稿者はおもに飲食店やコンビニの店員やアルバイトスタッフであった。
一方、今回の一連の騒動における投稿者は、主に利用客として店を訪れ、迷惑行為をするところが相違点だ。
おそらく、そのような迷惑客は以前から一定割合で存在していたに違いないが、スマホや動画共有サービスが発達したことで、迷惑行為が一種の「おもしろコンテンツ」として多数濫造されるようになった。その結果、多くの人目にも触れやすくなったという時代背景の変化があるものと考えられる。
多くの人目に触れるほど、迷惑行為は問題視されやすく、必然的に炎上しやすくなる。昨今はそういった可燃性の高いコンテンツを積極的に拡散し、閲覧数を増やすことで、自らのサイトや動画アカウントの広告収益を得ようとする者も多く存在する。そのため、一度注目を浴びれば拡散は幾何級数的に増加することになる。そうやってネット上で話題になれば、マスメディアもすぐに後追い報道をおこない、炎上はさらに加速するという構造だ。
「安くて早くてうまい」外食を守るには
外食チェーン各社は、従前の労働集約型の産業構造から地道な努力で改善を継続し、機械化、自働化によって効率化を実現させてきた。結果として、これまではいわば「ハレの日」の特別な食事だった寿司や焼肉といった本来高価な料理が、気軽に食べられる料金水準へと進化していったのだ。
しかし今般の一連の迷惑行為により、外食各社は追加の清掃や衛生・監視対策など、本来不要であったコスト負担を強いられる形となった。わが国の「安くて早くてうまい」外食サービスが成り立つのも、迷惑客など存在しない、性善説を前提としていたわけであるから、現状のままの価格帯ではもはや産業として成り立たないであろう。
私たちが当たり前のように享受してきた、リーズナブルでハイクオリティーな外食サービスは、決して当たり前ではなく、各社の不断の努力によって維持されているものだ。
よって本稿では、産業構造を崩壊させかねない炎上騒動を無意味に後追いするのではなく、厳しい収益構造においても工夫を凝らし、効率化や生産性向上を成し遂げている飲食各社を顕彰する報道をもって、わが国の誇るべき飲食業界を応援したい所存である。
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