「すしテロ」よりも注目すべき、外食チェーンの“本気の改革”:働き方の「今」を知る(2/4 ページ)
「安くて早くてうまい」日本の外食チェーン文化は、機械化・自動化などを用いた地道な企業努力で実現してきたものだ。昨今の、顧客による迷惑行為はこれらを根底から揺るがしかねない。この記事では、外食チェーンの努力を紹介することで、飲食業界を応援する。
「100人入ったら100人辞める」をどう脱却? 「すし銚子丸」の働き方改革
関東1都3県で92店舗(22年5月時点)の回転寿司店を展開する「すし銚子丸」は、1977年創業の老舗企業で、東証スタンダードに上場している。以前は年中無休営業という事情もあり、従業員は休みをとれず長時間労働も常態化しており、「100人入ったら100人辞める」といわれるほど離職率も高い状況で、労基署から指導を受けたこともあった。
あまりに多くの従業員が辞めていく状況に危機感を抱いた現・常務取締役の堀地元氏は、労基署の担当者に相談。退職者にも会社の課題をヒアリングし、必要と思われる施策を全て実行すると宣言した。
2017年には堀地氏が主導して「働き方改革本部」を設置し、店舗の営業時間短縮、繁忙期の営業形態変更、繁忙期開けの店舗休業日導入などを次々と決定。店舗の長時間労働を是正していった。
全店舗のうち半分ほどを休業させることで、1日あたり約1500万円の減収となってしまう。「それでも店を閉めるから、皆休むように」と繰り返しメッセージを出していくうちに、店舗側でも「本部は環境改善に本気だ」と気付き、徐々に現場と本部の意識の差が縮まっていったという。
結果として、従業員の離職率は改革前の16年5月期に12.6%だったところ、20年5月期には7.5%と、1桁台にまで減少することとなった。
その後は、依然として長時間労働が残っていた本部の改革にも着手。折しもコロナ禍という背景もあり、社内研修や会議、勉強会のオンライン化を推進していった。結果として会議や研修のために人が集まることで要していたコストを年間で約360万円(売り上げ換算で1億1800万円程度)も削減できたほか、オンラインで魚のさばき方を研修するなど教育面での生産性も向上した。
また同社では「日本全国の港から直接魚を仕入れる」ことを創業以来のこだわりとしていたが、この魚の買い付けについてもオンライン化を実現。漁港で上がったばかりの魚をオンライン映像で詳細に確認し、その場で金額交渉をして、従来にないスピード感で新鮮な食材を入手できるように。これにより、従来は港まで往復6時間をかけて実施していた現地買付が瞬時にできるようになり、育児・介護中の従業員でも買付担当として中枢で活躍できるようになった。
その結果、コロナ禍中の21年5月期第2四半期は前年同期比で39.5%の増益、営業利益率でも前年同期比2.2%の向上という成果を得られたのである。
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