「ヤン坊マー坊の歌」のヤンマーが、ブランド訴求のために建てた「新社屋」の仕掛け:根底に創業時の理念(1/3 ページ)
ヤンマー東京支社の新社屋「YANMAR TOKYO(ヤンマー東京)」がオープンした。ビル全体のデザインコンセプトがクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんによって手掛けられている。狙いを幹部に聞いた。
「持続可能な開発目標(SDGs)」が2015年に国連で採択されてから8年。今やSDGsは企業のブランド戦略において欠かせない存在となった。00年代では「企業の社会的責任(CSR)」が同様の役割を果たす面もあった。それから20年近くがたち、非財務価値をはじめとしたSDGsへの取り組みを、投資家が厳しく見る時代になっている。
ヤンマーホールディングスもSDGsに注力する企業の一つだ。同社は一般消費者からすると農業機械メーカーのイメージが強いかもしれない。だが実際には、小型ディーゼルエンジンを軸に、船舶や発電装置など多様な事業を展開している。
農業機械メーカーとしてのシェアは国内で約20%を占めていて、クボタに続く2位のシェアを誇っている。だが、それはあくまで一例にすぎない。非常用発電機のシェアは国内約40%、漁船用エンジンでは実に国内約70%のシェアを獲得している。
14年に終了した「ヤン坊マー坊天気予報」
いずれも企業対企業、B2Bの性質が強いため、ヤンマーは一般消費者への認知度向上を目的にさまざまな施策を打ってきた。30代以上の読者にとってなじみがあるのが、「ぼくの名前はヤン坊〜♪」の歌い出しで知られる「ヤン坊マー坊天気予報」だろう。主に夕方の時間帯のヤンマー1社提供の天気予報番組で、1959年6月から2014年3月末までの半世紀以上にわたって放送されていた。
この「ヤン坊マー坊の歌」の歌詞では、農家の機械や漁船のエンジン、ディーゼル発電やディーゼルポンプ、建設工事に至るまでヤンマーの技術が使われており、それらが「小さなものから大きなものまで動かす力」になっていることがうたわれている。子どもたちを中心に、企業の認知度を高めようというヤンマーの姿勢がうかがえる。「ブランディング」という言葉がない時代から、近いことをやっていたといえるだろう。
こうしたヤンマーの企業努力は、テレビ番組だけにとどまらない。建物の拠点を通じてもブランドを訴求している。ヤンマーグループの本社は大阪市北区に置かれていて、その立地は大阪駅の駅前、特に阪急大阪梅田駅に隣接している。さらに東日本の拠点である東京支社のビルは東京駅八重洲口の駅前に位置しており、地下から駅に直結しているアクセスの良さだ。いずれも自社保有ビルであり、人の行き来がとても活発で、人目に付きやすい立地にすることによって消費者の認知度向上を図る狙いがある。
この大阪、東京の両拠点とも半世紀以上の歴史があり、社屋の建て替えが進んでいる。大阪のヤンマー新本社ビルは2014年9月末に竣工。「YANMAR FLYING-Y BUILDING」と名付けられ、「自然との共生」をコンセプトに掲げている。ミッションステートメントに「未来につながる社会とより豊かな暮らしの実現」をうたっていて、ビル南側の外壁が壁面緑化されているのが特徴だ。こうした姿勢は行政からも評価されていて、17年1月には「第36回大阪都市景観建築賞」を受賞している。
ビル下層には商業施設も入居しており、ユニクロの大阪旗艦店である「UNIQLO OSAKA」が1階から4階に入っている。さらに地下1階と2階にはユニクログループのブランド「GU」がある。
そして東京支社の新社屋が、この1月にオープンした。「YANMAR TOKYO(ヤンマー東京)」と名付けられ、ビル全体のデザインコンセプトがクリエイティブディレクターの佐藤可士和さんによって手掛けられている。佐藤可士和さんはユニクロのロゴデザインやブランド戦略にも携わっている。
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