世界一“休みベタ”な日本人 「WBC休暇」がこれほどまで喝采を浴びたワケ:働きやすい職場とは(2/3 ページ)
平日の午前、日本列島が歓喜にわいた。第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は日本が米国を3−2で破り、2009年の第2回大会以来、14年ぶり3度目の優勝を果たした。仕事そっちのけで中継を見守った人が多かったのではないか。そんな中、試合時間に合わせて午前を休みにする「WBC休暇」を複数の企業が取り入れ、大きな話題になった。世界一“休みベタ”とされる日本人だが、企業が率先して「WBC休暇」を導入したことの意義とは何なのか。
国際的なスポーツイベントと企業の休暇は、これまでもたびたび話題になってきた。22年のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会では、現地へ応援に行ったNTT東日本の社員が「上司へ、2週間の休暇をありがとう!」と英語で書いたメッセージを客席から掲げ話題に。社員は有給休暇と休日出勤した分の代休を組み合わせて2週間の長期休暇にしたという。
当時、国際サッカー連盟FIFAがTwitterで取り上げ、大きな話題となった。同社は当時の取材に対し、「充実した休暇を取ってもらうのは業務にも良い影響を与える。社員が働き方を工夫して有意義な休暇を過ごしているなら望ましい」とコメントしている。
「社員の気持ち理解する企業の証明に」
「WBC休暇は痒(かゆ)い所に手が届く施策。社員の気持ちを理解し、その気持ちに応える企業であることの証明になる」
こう話すのは、経営管理や人事責任者などを長年経験し、企業の内部事情に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎氏だ。
この日の試合開始前、SNSでは「休みたい」「決勝が見たくて仕事にならない」――などのワードがトレンドに。メジャーリーグベースボール(MLB)のTwitter日本公式アカウントは「仕事をしている場合ではないという皆さんのために、MLBジャパンが書類をご用意いたしました」とツイートし、作成した「休暇届」とともに大きな話題になった。
こうした背景から、川上氏は「WBC休暇がある会社はうらやましい存在になったのではないか」と指摘。「採用難の時代に、社員からの支持を集められる制度の設置は経営戦略の一環として有効な施策」とも強調する。
世界一“休みベタ”な日本人
日本人は世界一“休みベタ”――。そんな状況を示す調査結果がある。旅行予約サイト大手のエクスペディアが世界の国・地域を対象に実施する「有給休暇の国際比較調査」。19年の調査では日本の有給休暇取得日数は10日、取得率は50%で、4年連続最下位となった。
休みを取らない理由として、最も多かったのは「緊急時のために取っておく」。2位に「人手不足」、3位に「仕事をする気がないと思われたくない」が続いた。有給休暇を取得する上でも職場の空気を読む日本人の様子がうかがえる。
有給休暇の取得に罪悪感を抱く人の割合(18年調査)でも日本は58%でトップ。最も低かったメキシコの20%より38ポイントも高かった。
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