人的資本開示、「株主に信頼される」開示指標の作り方とは?:人的資本経営「3つの成功要因」(2/2 ページ)
人的資本の開示において、株式市場など各ステークホルダーの信頼を得られる開示指標を設定するには、どうすれば良いのでしょうか?
PDCAを図るために必要となる新たな基盤
前述した指標設計ができた後、ボトルネックになるのが「データが集められない」「その進捗を随時把握できないがゆえにアクションが取れない」といった課題です。
企業が人的データを効率的に一元管理することで、こうした課題の解決につながり、効果的な業務遂行のための基盤づくりになります。これによって効果的な開示戦略の立案や、人材戦略にひも付いた施策のPDCAが可能になります。
そのために必要な要件は
- 国内・グローバルのデータが集約されたDBであり、その指標管理に必要な人事・人事外データが管理できる
- 現在の戦略に設けた指標と現状が比較可能な状態で閲覧することができ、その差異が把握できる
- 開示という断面で切り取り、必要な情報を抽出することができる
といった基本的な要件であると同時に、
- 目標を設定するためのベンチマークデータが確認できる
- 現在の人材の状態が可視化できる人材ポートフォリオを参照できる
- 現状との差異の原因を分析することができる、またはその原因を示唆する提案がある
といった発展的な要件を設定することで、より人的指標管理を進化させていく必要があります。
このような人事の検討にとどまらない指標設計と、その指標設計のための基盤構築が、人的資本経営においては必要不可欠といえます。
次回は、これらの指標における現状との差異からひも解いた課題を解決する施策の立案として、特に各企業における関心の高い「エンゲージメント向上」のための新しい施策について説明します。
著者プロフィール
久保田 勇輝(くぼた ゆうき)
アビームコンサルティング株式会社
執行役員 プリンシパル 戦略ビジネスユニット 人的資本経営コンサルティングチームリード。
パッケージ会社/コンサルティングファームで人事コンサルティングに従事。人事の戦略、プロセス、テクノロジーの事業責任者として、多くの企業の人事戦略策定、タレントマネジメント、DX構想から業務設計、システム構築まで一貫したコンサルティング実績を有する。
細田 俊之(ほそだ としゆき)
アビームコンサルティング株式会社
戦略ビジネスユニット シニアマネージャー 人的資本経営コンサルティングチーム。
コンサルティングファームで人事コンサルティングに従事。多くの企業の人事戦略策定、タレントマネジメント、DX構想から業務設計、システム構築まで一貫したコンサルティング実績を有する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
孫正義氏に伴走して20年、ソフトバンクG金庫番が「最も大変だった」こととは?
「CFOの意思」第9回の対談相手は、ソフトバンクグループの後藤芳光氏。同社の金庫番を務めてきた二十余年で、最もハードだった挑戦は? 世間を驚かせたボーダフォン日本法人の買収は、どのようにして実現させたのか。孫会長と伴走したこれまでを振り返る。
【人的資本開示】どんな項目を開示すべきか? 3つのポイントと具体的なアクションステップを解説
近年、注目が集まる「人的資本開示」。ESG投資家や労働市場など、社外のステークホルダーの視線を意識する他、有価証券報告書への記載が義務化されたこともあり、早急に取り組もうと考える企業が多いようです。人的資本開示のポイントや、項目の選定のための考え方、具体的なアクションステップなどについて解説します。
成長企業は知っている、人的資本経営で「外部アピールよりも重要なこと」とは?
人的資本開示とやらに取り組まなければ、投資家からの評価を得られなくなるらしい──。そんな危機感を原動力に、多くの企業の経営層や人事職が今、「人的資本経営」の取り組みに向けて情報収集している。
債務超過で「突然の経営危機」──GMO安田CFOが、乗り越えられた理由
「CFOの意思」第6回の対談相手は、前編に引き続きGMOインターネットグループ副社長兼CFOの安田昌史氏。過払い金問題で「280億円で買った会社を、500万円で売る」危機に陥っても、会社を成長させられたのはなぜか? 撤退覚悟の状況で繰り出した「ウルトラC」の技とは?
「手塩にかけて育てたのに転職」を、どう防ぐか? 社員のキャリア開発マニュアル
近年、多くの企業が取り組む「従業員のキャリア開発」。キャリア自律を支援する一方で、推進するにあたっては課題や、退職リスクもあります。十分な検討と準備が必要ですが、それでは、何から始めればよいのでしょうか。解説します。



