「乃が美」と「いきなり!ステーキ」の共通点は何か 両社がハマった沼:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「乃が美」と「いきなり!ステーキ」が苦戦している。贅沢品を扱う両社はなぜ低迷しているのか。共通点を探してみると……。
「乃が美」と「いきなり!ステーキ」の共通点
実は「乃が美」も「いきなり!ステーキ」も全国47都道府県すべてに出店するということに、並々ならぬ意欲を見せていたという共通点がある。
例えば、「乃が美」は全国制覇がよほど嬉しかったのか、Webサイトでこのように誇らしげに紹介している。
『高級「生」食パン専門店『乃が美』は、創業6年8ヶ月で、全国47都道府県制覇、173店舗の出店を達成しました』
「いきなり!ステーキ」もWebサイトで『「祝!全都道府県出店」秋田県オープン!363号店「秋田東通店」』(18年11月30日)として以下のように祝っている。
『これにより、いきなり!ステーキは日本全国の都道府県に出店を果たしました。オープンセレモニーにはタイミングよく!ユネスコ無形文化遺産に登録されたばかりの「なまはげ」さんも登場していただき、盛大に行われました!』
このように聞くと、「フランチャイズ展開してるんだから全国制覇を目指して当然だろ」と感じるかもしれないが、贅沢品を扱う店がこれをやってしまうのは自殺行為だと言わざるを得ない。
「ブランド価値」がただ下がりになってしまうからだ。
高級食パンもステーキも基本的には庶民には縁遠いものだ。それでも給料日だからとか、たまには贅沢をしたいとかいう思いがあって利用する。普段はスーパーの食パンを買っている人も、手土産などで「乃が美」を利用する。消費者はこれらの贅沢品に「特別感」を求めていると言ってもいい。
しかし、全国制覇を掲げてあちこちに出店をするようになって、「最近よく見るなあ」「駅前にできるらしいよ」という認識が広がると、この特別感はどんどん薄れていく。
これがコンビニや牛丼、コメダ珈琲のような日常感のあるチェーン店であれば「便利になっていいね」となるが、高級食パンやステーキの場合、贅沢品なので利便性はそれほど感じない。むしろ、店が乱立するので「ありがたみ」が消えていく。
つまり、贅沢品が全国制覇を掲げて大量に出店するということは、贅沢品の最大の持ち味である特別感をどんどん弱めてしまう。その結果、「最近よく見かける高い店」というマイナスのブランディングをしてしまうことになるのだ。
「乃が美」と「いきなり!ステーキ」はまさしくこの悪循環に陥ってしまっているのだ。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 「いきなり!ステーキ」一本足打法経営が、なんともビミョーに感じるワケ
「いきなり!ステーキ」を再建させるために、運営元のペッパーフードサービスがアレコレ手を打っている。「ペッパーランチ」を売却したり、店舗数を減らしたり、人員を減らしたり。一本足打法経営がうまくいくのかというと……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。 - 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』――最も高い家に住んでいるのは? 査定してみた
国民的アニメの主人公は、どんな家に住んでいるのでしょうか? 『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』の自宅を査定したところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.