「さようなら、またね」 八重洲ブックセンター本店の建物が“複雑”で面白い:水曜日に「へえ」な話(1/4 ページ)
東京駅の近くにある「八重洲ブックセンター本店」が閉店する。周辺エリアの再開発によるもので、いったん終了する形だ。本店の建物は「船」をイメージしているが、その歴史を取材すると、興味深い話がちらほら。どんな内容かというと……。
東京駅エリアは、大きく2つに分かれている。山手線を挟んで皇居側が丸の内で、海側が八重洲である。10年ほど前の調査になるが、丸の内と八重洲の街のイメージを聞いたところ、このような結果が出た。丸の内については「高級感」「上品」というワードが並び、八重洲は「にぎやか」である。
飲食店や小さな店がたくさん並んでいるので「八重洲=にぎやか」といったイメージがあるかもしれないが、ここ数年でその姿は大きく様変わりしている。2021年に「常盤橋タワー」が完成して、23年3月に「東京ミッドタウン八重洲」がオープンして。今後も高層ビルがにょきにょき建っていくので、たまに足を運ぶ人は「あれ? こんなところだったっけ?」と感じるのかもしれない。
アレもなくなるのか、コレもなくなるのねといった中で、個人的に気になったのは「八重洲ブックセンター本店」だ。「駅前の大きな書店もなくなるのかあ。ま、本はなかなか売れないから仕方ないよね」と思われたかもしれないが、「閉店ガラガラ」ではない。周辺エリアの再開発計画に伴って、3月31日をもって営業をいったん終了するのだ。
八重洲ブックセンター本店が登場したのは、1978年のことである。超高層ビル「サンシャイン60」が開館したり、キャンディーズのサヨナラコンサートがあったり、漫画『宇宙戦艦ヤマト』がブームになったり。若い人にとっては「何それ? 知らないなあ」と感じられたかもしれないが、そんな時代にこの書店はオープンしたのだ。
建物は「船」をイメージしたデザインで、八重洲のランドマークの一つになっていた。開店当時の売り場面積は約750坪で、在庫数は約100万冊。これほどの書籍をそろえるところは珍しく、当時は「マンモス書店」とも呼ばれていた。
いまではちょっと考えられないが、オープン当初は黒山の人だかりだったのだ。詰めかけた人数は4日間で12万8000人、年間で1000万人。当時の八重洲は夜間人口が少なかったが、本店が営業を始めたことによって「人の流れが一変した」ともいわれていた。
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