くら寿司やスシローに残る、迷惑動画の爪痕 SNS運営に責任はないのか?:小売・流通アナリストの視点(2/3 ページ)
コロナ禍で病み上がりの外食業界に、物価高騰が追い打ちを掛けている。ファミレス、ファストフード、居酒屋、回転寿司などの業績は、どのくらい復活したのか? そして回転寿司業界に残る、迷惑動画の爪痕は? 流通・小売りアナリストが解説する。
外食大手の動向は
こうした環境下で今、外食大手の動向はどのようになっているだろうか。
以下の図表は、主な上場外食企業の既存店客数の推移を、コロナ前の水準で単純計算した数値(既存店客数増減率を2020年〜2023年まで掛け合わせた数値)で比較したもので、正確な客数推移ではないが、おおまかな傾向を示している。
明暗分かれるファミレス サイゼ、ロイヤル、ジョイフルは復調
ファミリーレストランでは、ロイヤル、ジョイフルが昨年末からコロナ禍前90%以上が続いている。サイゼリヤも追い付いて、2月には95%程度まで回復している。
回復に遅れがみられるのが、ガストなどを展開するすかいらーくで、7割台で推移しつつ若干下げ気味であり、今後の推移次第ではさらなるテコ入れが必要かもしれない。
ファストフードは順調に回復 都市部の吉野家・松屋はやや苦戦
ファストフードはマクドナルド、モスフード、すき家がほぼコロナ前に近い推移で順調に推移している。
吉野家、松屋フーズの牛丼2社は、改善傾向にはあるものの、コロナ前9割程度までの回復となっている。この両社に関しては、大都市部店舗が多く、都市部の人流回復が遅れているというビハインドもありそうだ。
鳥貴族・王将が善戦するその他形態
その他では、鳥貴族が2月にはコロナ前の95%と苦戦している居酒屋業界において目立った回復を見せている。王将フードサービスも95%程度まで戻しており、客数改善傾向を維持している。
日高屋はまだ8割台ではあるが、緩やかな回復をみせる。これに対して、幸楽苑はほとんどが6〜7割台と極めて厳しい推移となっている。
不祥事が続く回転寿司 「すしテロ」の影響は?
回転寿司業態は、不祥事などで騒がれたことが記憶に新しい。くら寿司、かっぱ寿司は9割程度で推移しつつも、若干下落傾向となり、さえない推移だ。スシローは秋口の大きな落ち込みから、2月にはようやく他社並みに回復した状況にある。こうした中で、例の迷惑動画による影響が今後どうなるかは、気になるところだ。
いわゆる「すしテロ」に関しては、回転寿司側は被害者であり、おおむね同情的な意見が多いと聞く。しかし、安全面への懸念が想起されることから、敬遠するようになった消費者も少なくないという。回転寿司各社は原材料高騰などの影響もあって、収益の低下が懸念されている時期でもあり、3月以降の客数に影響があるようだと、再び業績の見直しにつながる可能性もあろう。
それでなくても迷惑動画が発端となって、寿司を回転レーンで回さなくする対応や、監視システムの強化対応を余儀なくされており、売り上げやコストに何らかの影響が及ぶことは避けられない。
被害者であるはずの企業が迷惑行為への対策コストを負担することになるのだが、それがひいては消費者にも価格やサービス面で負担を強いることにつながるだろう。消費者の財布のひもが締まりつつあり、外食需要にも影響が及ぶ可能性が高い今、ごく一部の迷惑な行為が業界全体のコスト負担を増加させ、さらにはわれわれ消費者の外食コスパを下げることにつながるのは、何ともやりきれない思いではある。
関連記事
- アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。 - 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相
求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。 - 池袋から西武がなくなる──変わりゆく街と客層、百貨店が消える本当のワケ
セブン&アイ・グループの百貨店そごう・西武が売却された。これにより、旗艦店の西武池袋がヨドバシカメラを核店舗とした商業施設に替わるのではないかという報道が、賛否両論を巻き起こしている。西武池袋のような駅に隣接した百貨店が消えゆくワケと、これからの百貨店に求められるものとは──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.