トヨタが奮闘する燃料電池は、再び脚光を浴びるのか:高根英幸 「クルマのミライ」(1/6 ページ)
トヨタのFCEV「MIRAI」の販売台数がいまひとつである。直近の販売台数を見ると、月に24台だ。このままでは「近未来のカーボンニュートラル」は絵に描いた餅で終わってしまいそうだが、業界ではどのような動きがあるのだろうか。取材して分かったことは……。
日本政府が「水素社会」というキーワードで世界にリードして、近未来のカーボンニュートラルの実現を宣言したのは、6年ほど前のことだ。しかし、そこからの普及はどうであろう。
トヨタは日本のエネルギー戦略と自動車産業の未来を担うべく、開発に奮闘して「MIRAI」を作り上げ、2代目へと進化させた。けれども最近の販売台数は月販24台というありさま。とても普及に向けて発展しているような数字ではない。
クルマ自体は素晴らしい出来で、1回の水素充てんで巡航できる距離も確実に伸びている。何が原因で売れ行きが伸び悩んでいるかは明白だろう。
そもそもインフラ整備が不十分なモビリティは必要な層、利用できる層に行き渡れば販売の勢いは落ち着く。簡単に飽和状態になることは、それだけインフラが不十分ということなのだ。
それでも、ここ2年ほどで水素ステーションは開設が進んだように見える。しかし実態を調べると、週に1日にしか営業していないところもあり、車載型の移動式ステーションが数カ所を掛け持ちして巡回しているところも多く、とてもユーザーの利便性を考えたとはいえない状況だ。
EVの充電スタンド同様、FCEV(燃料電池自動車)普及への課題には「鶏が先か、卵が先か」とばかりに販売台数とインフラ整備のどちらが先行すべきかという議論が散見される。確かにインフラ整備を進めても販売台数が伸びなければ充電スタンドの利用者は増えず、採算が取れずにメンテナンスや修理、入れ替えの費用が捻出できず、結果として老朽化した施設は廃止されている例も多い。
自治体も国の補助金頼りで、赤字を続けてもEVNO(Energy Virtual Network Operator)普及促進を下支えする気がないのだ。これでは普及は難しい。同様に水素ステーションも国の政策として急ピッチで建設を進めているが、これまでの6年という年月を考えれば、もっと進められたはずではないだろうか。
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