「人的資本経営」理解度わずか28% 普及を阻む原因は?:部長・課長1000人に聞いた(1/2 ページ)
昨今、耳にする機会が増えた「人的資本経営」。言葉は知っていても、中身まで理解している人は、果たしてどれくらいいるだろうか。部長・課長級でも内容まで知っている割合は、わずか28%――。そんな結果が、コーチング事業を手掛けるビジネスコーチ(東京都千代田区)の調べで分かった。調査から見えてきた、人的資本経営の推進を阻む要因とは。
昨今、耳にする機会が増えた「人的資本経営」。言葉は知っていても、中身まで理解している人は、果たしてどれくらいいるだろうか。部長・課長級でも内容まで知っている割合は、わずか28%――。そんな結果が、コーチング事業を手掛けるビジネスコーチ(東京都千代田区)の調べで分かった。調査から見えてきた、人的資本経営の推進を阻む要因とは。
「人への投資」度合いを可視化
「人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」。経済産業省はこのように定義する。
昨今、財務情報にとどまらない環境や社会問題に配慮した「ESG投資」に注目が集まる中、投資家向け情報として「人への投資」を開示義務化する動きが2020年に米国で始まり、日本にもその動きが波及した。
政府が22年8月に発表したガイドライン「人的資本可視化指針」では、開示項目として「人材育成」「エンゲージメント」「流動性」「ダイバーシティ」「健康・安全」「労働慣行」「コンプライアンス」の7分野19項目を挙げ、取り組みの加速を目指している。
今回の調査では、全国の従業員数300人以上の企業に勤める20〜69歳の「ミドルマネジメント層」(部長・課長)1000人を対象に、理解の浸透度合いを調査した。
「掛け声倒れ」に終わりかねないリスク
人的資本経営の認知度は、全体の68.3%に達した。一方、「内容まで知っていた」との回答は全体で27.9%にとどまり、課長に限ると23.6%、部長でも38.4%で少数だった。
勤務先が人的資本経営への関心を「持っている」と回答した割合は71.0%。従業員規模別にみると、300〜1000人未満では65.4%、1000〜5000人未満では70.8%、5000人以上では75.6%となり、規模の大きい企業ほど関心が高くなった。
関心度が7割を超えた一方、勤務先が人的資本経営に「取り組んでいる」と答えた割合は49.3%と、5割を切る結果になった。
この結果について、調査を実施したビジネスコーチは「人的資本経営に対する理解不足がうかがえる」と分析。「理解や認識が組織全体に浸透しないままでは、人的資本経営は掛け声倒れに終わってしまう」と警鐘を鳴らす。
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