混沌極める「画像生成AIと権利問題」に光が差すか? アドビの緻密な戦略とは:本田雅一の時事想々(5/5 ページ)
画像生成AIが話題だが、権利問題についてはさまざまな懸念があり、混沌を極めている。そんな中、アドビが仕掛ける逆張りの戦略とは?
画像合成だけではなく、画像生成でも「帰属先」を明示
アドビはさまざまな企業とともに、クリエイターが生み出すデジタルコンテンツの扱いに関して世界的な標準を構築するため、Content Authenticity Initiative(CAI)でのルールづくりを進めてきた。CAIは2019年に設立された業界団体だが、中でも重要なのが「コンテンツクレデンシャル」という2021年に発表されていた技術だ。
コンテンツクレデンシャルでは、著作物の帰属先としてSNSアカウントや仮想通貨ウォレットなどを結び付けることが可能になっている。
例えば、あるモデルを撮影したポートレイト写真と別のグラフィックスデザインを合成し、別のクリエイティブを作成したとしよう。新しいコンテンツを作ったクリエイターのサインはもちろん、元にした画像権利に関する情報も埋め込まれ、帰属先が明示されるといった具合だ。
やや発想が飛ぶかもしれないが、このような仕組みは楽曲の一部をループに再利用したり、リミックスで新たなイメージの楽曲に再制作するといった場合や、動画作品を元に再創作を行うといったジャンルでも活用できるだろう。
話が横道に逸れたが、こうした仕組みを、AIが生成するコンテンツにも引き継ぐ形にする。ある画像生成AIが作り出した、あるイラストを元に制作された画像は、生成したオペレーターのサインも入るが、その元になった学習データの帰属先も記されるというわけだ。
実際の運用や実装はこれからだ。今後、文章、イラスト、写真、それに動画や音楽など、さまざまなコンテンツの制作環境はAI時代に劇的に、今後も驚くような変化が続いていくだろう。その中で、海賊的なAI生成コンテンツから、商利用可能なビジネスのAI生成市場への変革の流れが強まることは間違いない。
そんな中で、アドビは自社サービス、市場環境、そしてクリエイター向けツールの面から先手を打とうとしている。
マイクロソフト、アドビの次はどこなのか。5月、グーグルは開発者向けイベントの「Google I/O」を開催する予定だ。
関連記事
- アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - Z世代が「古い!」と思う仕事の価値観 「飲みにケーション」「プライベートより仕事優先」を上回る1位は?
Z世代が「古い!」と感じる仕事の価値観とはどのようなものか? キーボードアプリ「Simeji」を提供するバイドゥが、Z世代を対象に調査した。 - 「ブラック企業だ……」と思う職場の特徴 3位「休みが取れない」、2位「長時間労働」、1位は?
「ブラック企業だ……」と思う職場の特徴とは何か? AlbaLinkが有職者500人を対象にアンケートを実施した。 - 「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.