混沌極める「画像生成AIと権利問題」に光が差すか? アドビの緻密な戦略とは:本田雅一の時事想々(4/5 ページ)
画像生成AIが話題だが、権利問題についてはさまざまな懸念があり、混沌を極めている。そんな中、アドビが仕掛ける逆張りの戦略とは?
「生成AI時代」の新たな著作物管理
前述したように、アドビはFireflyの将来版にクリエイターによるカスタムAIモデルの構築ツールを提供し、それをAdobe Stockで販売、あるいは生成した画像にライセンスを発行するなどの仕組みを提供するとアナウンスしている。
例えば現在のFireflyで男性女性を問わず、モデルのポートレイトを使った画像を生成させてみると、(プロンプトの修飾次第だが)かなり高い確率で同じモデルが出てくる。学習されている画像データに限りがあるため、どうしても「どんな感じ」と指定する部分が似ていれば、出てくる映像も同じになってくるということだ。
これがイラストやグラフィックスならば、似た作風だがカラーレイアウトや細かなディテールが異なる別バリエーションとなるが、写実的な画像だとそうもいかない。またイラストやグラフィックスも、そのままズバリではなくとも一貫した作風を感じることは多い。
アドビの狙いがうまくいけば、例えばモデルをなりわいとしている人が自分の写真を多数学習させたり、グラフィックデザイナーが一貫した作風のテクスチャなどを学習させたり、あるいはイラストレーターが過去のポートフォリオを学習させたりと、さまざまなタイプのカスタムAIモデルを提供可能になる。
アドビは広告制作ツールのAdobe Expressに、広告コピーのひな型作成機能なども付与しようとしており、あるいは将来的には印象的な広告コピーを生成するAIモデルなども販売されるようになるかもしれない。
クリエイターや(被写体としての)モデルには、新しい可能性が控えているともいえる。商業的にどこまで使えるレベルになるのかという疑問をまだお持ちの方もいるだろうが、それは技術やノウハウがあっという間に解決するだろう。
ということで、アドビが同時に取り組んでいるのがAIが生成したクリエイティブの扱いについて、世界的な標準を決めていくことだ。
関連記事
- アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - Z世代が「古い!」と思う仕事の価値観 「飲みにケーション」「プライベートより仕事優先」を上回る1位は?
Z世代が「古い!」と感じる仕事の価値観とはどのようなものか? キーボードアプリ「Simeji」を提供するバイドゥが、Z世代を対象に調査した。 - 「ブラック企業だ……」と思う職場の特徴 3位「休みが取れない」、2位「長時間労働」、1位は?
「ブラック企業だ……」と思う職場の特徴とは何か? AlbaLinkが有職者500人を対象にアンケートを実施した。 - 「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.