ファストリUSA総務責任者が語る「女性管理職を半数に引き上げる理由」:多様性とスピード経営を両立(1/2 ページ)
ファーストリテイリングがグローバルで進める重要なアジェンダに掲げているのが、女性管理職比率の向上だ。グループ執行役員を務め、ファーストリテイリングUSAで人事や法務を担当するChief Administrative Officerのセレーナ・ペック氏が、米国での人材育成やD&Iの取り組みを説明する。
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは3月に報酬を改定し、国内社員の年収を約40%引き上げた。
新入社員については初任給を月25万5000円から30万円に引き上げることで、年収も約18%アップしている。
入社1年目から2年目に就任する新人店長は、月収29万円を39万円に引き上げ、年収で約36%のアップとなった。その他の従業員も、年収で数%から約40%の範囲でアップした。
この報酬改定の理由について、同社は「成長意欲と能力ある従業員一人ひとりにフェアに報い、企業としての世界水準での競争力と成長力を強化するため」と説明している。
組織の働き方も見直し、各国・地域の本部がグローバルに、それぞれの現場と連携して問題解決を推進しやすい組織や働き方、フラットで機動性が高い組織構造などをつくっていくという。
ファーストリテイリングは2月、企業のダイバーシティー&インクルージョン(以下:D&I)推進の取り組みを評価する「D&Iアワード2022」で、ダイバーシティスコア96点(100点満点)を獲得。最高評価の「ベストワークプレイス」に認定された。
同社が2022年11月に東京都内で開催したサステナビリティ説明会では、取締役でグループ上席執行役員の柳井康治氏とともに、グループ執行役員を務め、ファーストリテイリングUSAで人事や法務を担当するChief Administrative Officerのセレーナ・ペック氏が登壇。米国での人材育成やD&Iの取り組みについて説明した。セレーナ・ペック氏からの報告を、お伝えする。
女性管理職比率を50%に
「女性に力を持っていただいて、次世代のリーダーシップを担っていただくことに熱意を持っています。女性のリーダーが経営陣の50%を占めることを、グローバルベースで遅くとも30年末までには達成します」
サステナビリティ説明会でセレーナ・ペック氏は、女性リーダーの育成について、こう語った。同社がグローバルで進める重要なアジェンダに掲げているのが、女性管理職比率の向上だ。
女性管理職比率は、14年は19%だった。それが、22年8月現在では43.7%まで上昇した。北米エリアではD&Iに重点的に取り組んでいて、その中でも女性の能力を引き出すことに力を入れているという。
一般的に日本の企業はジェンダーギャップ指数が低い水準にあり、D&Iの取り組みが遅れている。日本の企業ということで、グローバルでの競争力に影響が出る可能性もあるが、そうならないためにもダイバーシティーを優先する必要があるとセレーナ・ペック氏は語った。
「グローバルでナンバーワンになるためには、ダイバーシティーを優先付けする必要があります。日本の企業なので、時として難しい場面もあると思います。十分に理解できないこともあるかもしれません。それでも毎日努力して、ジェンダーギャップを縮めようとしています。
管理職の女性比率を上げることについては期待感を持っています。雇用や昇進、ジェンダーに関する多様化についてつねに検討し、本社や各地域でも展開できるように取り組んでいます」
社員1人あたり月1000ドルまで育児費用を負担
ファーストリテイリングは、米国とカナダについては北米の組織として一つに統合している。23年1月にはD&I専任のマネジャーを米国に配置した。
米国ではこれまでも女性従業員の声を聞き、さまざまな制度を導入している。その一つが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて導入した育児支援制度だ。
「21年に多くの女性から寄せられたのが、パンデミックの影響で育児サービスへのアクセスが困難になったということです。そこで、社員1人あたり月1000ドル(4月10日現在、日本円で約13万2584円)まで育児費用を直接負担する育児支援制度を導入しました。
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