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日立のサステナビリティ推進本部長に聞く 2024年度までにCO2の1億トン削減に貢献市場の6割以上が海外

日立製作所が、サステナブルな社会の実現を目指そうとしている。環境対策を含むサステナビリティの分野で新しいルールが生まれるなど開示要求が毎年強まる中、グループ企業を含めた約37万人の従業員に対し、目標をいかに共有し、実現していくのか。津田恵サステナビリティ推進本部長に聞いた。

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 日本を代表するグローバル企業の日立製作所が、サステナブルな社会の実現を目指そうとしている。

 省エネルギー・脱炭素に資する新しい製品を顧客が使うことで生み出されると考えられる効果である「削減貢献量」として2024年度には1億トンを目指すなど、環境問題に積極的に取り組む。

 環境対策を含むサステナビリティの分野で新しいルールが生まれるなど開示要求が毎年強まる中、グループ企業を含めた約37万人の従業員に対し、目標をいかに共有し、実現していくのか。津田恵サステナビリティ推進本部長に聞いた。

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津田恵(つだ・めぐむ)1969年生まれ。91年に大阪ガスに入社、2017年に同社CSR・環境部長、20年同社イノベーション推進部長、21年7月に日立製作所に入社、サステナビリティ副本部長、22年4月から同社 理事、サステナビリティ推進本部長。京都市出身。

会社が成長していくためのドライバーに

――日立が環境対策に積極的に取り組むようになった経緯は何でしょうか。

 日立の企業理念は、創業以来「優れた自主技術と製品の開発を通じて社会に貢献する」というものです。110年以上の長い年月を経て、「IT×OT(Operational Technology)×プロダクト」の3つを統合的に活用して社会課題を解決できるのは日立の強みだと思っています。

 この3つの掛け合わせで社会課題を解決し、新しい価値を生み出す「社会イノベーション事業」を進めています。環境問題は現代社会における最重要課題の一つであるため、企業理念と照らし合わせて、率先して取り組むべきだと考えています。

 また3年に一度、中期経営計画を出していますが、22年4月に出した「2024中期経営計画」でも「データとテクノロジーでサステナブルな社会を実現して人々の幸せを支える」ことをうたっています。

 「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」という言葉を使っていますが、地球を守って社会を維持すること、要は地球を汚すのではなく守ることを、一人ひとりの人間のウェルビーイング(幸福で肉体的、精神的、社会的全てにおいて満たされた状態)とセットで実現しなければならないということです。地球を守ることと、一人ひとりの幸せを両立することが非常に大事だと考えています。

――日立にとってサステナブルな社会を実現することの位置付けは?

 環境問題を解決しサステナブルな社会を実現することは、当社にとってコストではなく、価値を生み出して日立自身が会社として成長していくためのドライバーにもなり得ます。そのため、積極的に環境問題に取り組もうという姿勢になっています。

 もともと日立は16年に、環境の長期目標である「日立環境イノベーション2050」を策定し、取り組んできました。これは、30年と50年を見据えた長期の目標です。「脱炭素社会」「高度循環社会(サーキュラーエコノミー)」「自然共生社会」の3つの柱と、実現すべき社会があります。

 16年の策定以降も世の中は絶えず変化しているので、長期目標の中身を継続して引き上げている状況です。現時点では、30年度までに日立のオフィスや工場をカーボンニュートラルにすることを目指しています。また、日立が関わる調達先やお客さまなどを含む全てのバリューチェーンについては、50年度までにカーボンニュートラルを達成するように目標を引き上げています。

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日立環境イノベーション2050(日立製作所のWebサイトより)

――今年4月にサステナビリティを担当する新たな役職が設けられたそうですが、どういうものですか。

 チーフ・サステナビリティ・オフィサー(Chief Sustainability Officer)という役職を設置し、執行役常務でイタリア人女性のロレーナ・デッラジョヴァンナがこの役割を務めています。彼女が私の上司になりますが、社員全員に「気候変動領域のイノベーター(Climate Change Innovator)になろう」と呼びかけています。気候変動の領域で、社員一人ひとりがイノベーションを起こすのだということです。

 これを合言葉にして、社員それぞれが目標達成に向けて取り組んでいるところです。ロレーナは1988年に日立ヨーロッパに入社し、さまざまなポジションを経験し、現在は東京本社で働いています。

――2016年に目標を策定してから6年経っていますが、どんな変化がありましたか。

 われわれが作った目標を、実際に達成してもらうのは各ビジネスユニットやグループ会社の社員なので、この6年をかけて、世の中でどんな変化が起きているのかを説明してきました。

 皆さんもその変化をだんだん肌で感じているようです。例えば、お客さまが入札するときに、エビデンスを出してくれと言われるなど日立がいかにクリーンかを問われるそうです。そのため、より全社一丸となってこの目標に取り組めるようになった実感があります。

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マテリアリティを構成する15のサブ・マテリアリティと目標

――脱炭素については削減目標を30年と50年で出しています。どのように達成していきますか。地域ごとに違いがありますか。

 日立内部の脱炭素、いわば自分たちの足元をきれいにすることを、「GX(Green Transformation) for Core」と呼んでいて、根っこの部分の脱炭素化に取り組んでいます。その中で得た学びや培った能力を、今度はお客さまや社会の脱炭素化に活用していく「GX for Growth」につなげます。この2本立てで並行して取り組んでいくつもりです。

 GX for Coreにいかにして取り組むかは、次の3年間で約370億円を使って、従来よりも省エネルギーな設備や太陽光パネルなどの再エネの設備を導入するアプローチを考えています。

 日立はグローバルで事業を展開していて、市場の6割以上が日本国外になっているため、その市場ごとに変化や影響があります。もちろん1つの大きなルールや目標は策定しますが、それぞれの市場で調達先や省エネの投資などが最適になるように地域ごとに見ながら取り組んでいます。

 サプライチェーン全体についても50年にCO2排出量ゼロ、30年に半分という目標を掲げています。これは、例えば世の中のエネルギーの再エネ転換に深く関わっています。

 日立エナジーでは送電網事業なども手掛けているので、これからどんどん再エネが入ってきても対応できるよう送電網を整備できます。さらには鉄道の電動化やEVのための部品提供、お客さまの省エネをITで実現するソリューションなどに取り組んでいきたいと思います。

 日立の製品を導入したことによって、お客さま側のCO2排出量が減り、ひいては世の中のCO2も減ってくるので、それを24年度までに全体で1億トンの「削減貢献」につなげる目標を掲げています。

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「GX(Green Transformation) for Core」(日立製作所のWebサイトより抜粋)

――「削減貢献量」を分かりやすく説明するとどうなりますか?

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