イトーヨーカドーを大量閉鎖するのに、セブン&アイが「史上初」の年間売上10兆円を達成したワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
セブン&アイ・ホールディングスが決算を発表し、国内小売で初の売り上げ10兆円が大きな話題となった。グループのイトーヨーカドーで大量閉店を発表するなど、スーパー・百貨店事業は大幅なマイナス成長なのに、なぜ大記録を達成できたのか。
セブン&アイ・ホールディングスが4月6日に発表した決算によれば、2023年2月期の売上高が11兆8113億円となり、日本の小売事業者で「史上初」となる年間売上高10兆円を突破したと話題になった。
同社は国内でコンビニチェーンを運営するセブン‐イレブン・ジャパンや総合スーパーのイトーヨーカ堂のほか、ロフトのような著名企業を傘下に持つ。今回は北米のコンビニチェーン「スピードウェイ」の買収効果が表れる決算として注目を集めたが、大方の予想通り、これが売上高10兆円越えの決め手となった。
決算を事業セグメントで分解すると、同社はもはや「日本の会社ではない」といっても過言ではないかもしれない。11.8兆円に及んだ連結売上のうち、実に8割以上を海外コンビニエンスストア事業が占めている。また、増収要因の9割以上がスピードウェイ買収を含む同事業の成長金額(前年比約3.6兆円の伸び)によってもたらされている。
国内事業の中でも国内コンビニエンスストア事業は2.0%の小幅成長で、スーパーストア事業や百貨店・専門店事業は2けたのマイナス成長で大幅減益となっている点に注目したい。
つまり、今回の買収がなかったら、同社は全体として大幅な減収が避けられない可能性があったということだ。そのため、今回の決算はスピードウェイ買収によって“作られた”、つまり順調な成長率はあくまで見た目だけのものだと一部でダメ出しされているようだ。
企業買収による好決算は「ずるい」?
こうした声が出る裏側には、買収による業績向上を「ずるい」とする価値観もあるだろう。確かに、本業が振るわない場合でも企業買収を行えば、ある程度の数字を“作る”ことができてしまう。そのため、売り上げや利益の大きい会社を取りあえず買ってしまうような意思決定に傾くケースはこれまでにもあった。
例えば、IPOで得た資金のほとんどを失ってしまった日本郵政の事例が挙げられる。
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