カーボンニュートラル燃料はエンジンを救うのか 欧州で始まったエンジン擁護論:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
EUの2035年エンジン車販売禁止策が、見直されることになった。クルマすべてをEVに置き換えるのは、あまりにも無謀だということをドイツが認めたからだ。そこで登場したのがCNF(カーボンニュートラルフューエル)。関係者は注目を集めているが……。
そもそも廃食油の燃料利用は最近始まったことではなく、ディーゼルエンジンでは20年以上前から行われてきたことだ。07年と09年の2シーズン、パリ〜ダカールラリーにトヨタ・ランドクルーザーをバイオ燃料で走らせた記録(ドライバーは元F1パイロットの片山右京氏であった)もある。
廃食油ではなく、植物性の油脂からも当然、バイオディーゼル燃料は作れるが、食料や飼料との競合は避けなければならないだろう。そういった意味では、一刻も早く微細藻類や植物(食料用とは別の植物)からのバイオ燃料生産を軌道に載せなくてはならない。それも日本国内で実施して、エネルギーの自給自足を進めるのだ。
マツダは広島大学との共同研究で、油をため込みやすい微細藻類のゲノム編集など、より高度な研究開発を続けているが、一朝一夕に成果が得られるようなものではなく、地道に丹念に続けることで成果へとつながるものだ。
この原稿を書いている最中にも、微細藻類における新たな研究成果が発表されている(関連記事)。それは細胞の外に油脂を放出しながら生産する藻類の開発に成功した、というものだ。これにより従来は細胞内にため込んだ油脂を取り出すために行っていた乾燥、抽出といった作業が不要になるばかりか、そのまま培養を続けて油脂を採取し続けることが可能になる見込みができたのだ。
従来、藻類でも細胞内に油脂をため込む種類の中でさまざまな優れた特性を伸ばすことを研究してきたが、今回の発表により、微細藻類の活用が大きく前進するのではないだろうか。
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