「乃が美」も「嵜本bakery」も 高級食パンが陥る「ブーム→大量閉店」の流れ:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「高級パン」ブームが過ぎたにもかかわらず、過当競争はなかなか終わらない。それにしても、なぜ同じような高級パーンの店が生まれるのか。背景に迫ってみると……。
同じ商売に飛びつきすぎ
これにはいろいろなご意見があるだろうが、筆者は個人的に「人口が減少しているわりに、みんな同じ商売に飛びつきすぎる」問題があると思っている。
ご存じのように今、日本は毎年、鳥取県の人口と同じくらいの人口が減っていく「縮みゆく国」だ。立派な評論家やジャーナリストは、そこは日本の誇るロボット技術でカバーだとか、ChatGPTの活用だなんだと楽観的なことを言うが、ロボットもAIもメシを食わないし、買い物をしないし、酒を飲んで宴会騒ぎはしない。
つまり、日本国内の「消費者」は移民でも受け入れなければすさまじいスピードで減っていくので、どれほどテクノロジーが進化しようとも、国内ビジネスは「縮小」を余儀なくされるのだ。
だから、人口増時代に確立された「大量出店をして47都道府県制覇」や「ドミナント戦略」(同一商圏内同じ店を多く出店することでロイヤリティを高める戦略)という拡大路線はガラガラと音をたてて崩れている。当たり前だ。国内の消費者が減っているのに、サービスや商品を供給する側が人口増時代のビジネスモデルを続けて、プレイヤーを増やしてもうまくいくわけがない。
にもかかわらず、この日本においてプレイヤーが爆発的に増えてしまうときがある。そう、「ブーム」だ。
「今、これがアツい!」なんてメディアで取り上げられて、店に大行列ができていると、どうしても「二匹目のドジョウ」を狙って参入する人たちが後を断たない。中には、ヒットしている商品やブランド名を思いっきりパク……ではなくてインスパイアされた「そっくりさん」まで出てくるのだ。
例えば、高級食パンでも「乃が美」や「SAKImoto bakery」が注目を集めると、「高級食パン」を名乗る店が乱立した。また、愛知の「最高級食パン専門店 い志かわ」とよく似ている「銀座に志かわ」なんて感じで、消費者が混同するような「そっくりさん」が次から次へとあらわれる。
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