「乃が美」も「嵜本bakery」も 高級食パンが陥る「ブーム→大量閉店」の流れ:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「高級パン」ブームが過ぎたにもかかわらず、過当競争はなかなか終わらない。それにしても、なぜ同じような高級パーンの店が生まれるのか。背景に迫ってみると……。
「寿命」を急速に縮める悪手
このように「模倣」は決して悪いことではない。むしろ、競合同士が切磋琢磨して、商品やサービスの品質向上や価格競争をさせていく効果も期待できるので、消費者的には悪いことではない。
では、何が悪いのかというと、「今の人口減少時代にはそぐわない」という点に尽きる。似たような店が乱立すれば、競合同士が切磋琢磨して、商品やサービスの品質向上や価格競争が激しくなる。しかし、どれだけ安くていいものを提供しようとも、消費者は減っているのでもうからない。「薄利多売」は人口増時代だから成立したビジネスモデルなのだ。
今の中国や高度経済成長期の日本を見れば分かりやすいが、人口が増えている社会では「パクリ」のビジネスはおいしい。ブームが過熱すると、オリジナルを買えない人々が世の中にあふれかえるので、「コピー」でもそれなりに売れるからだ。
しかし、人口減少社会ではそうならない。ブームが起きて行列ができても、消費者が少ないので「オリジナル」を購入できる。「コピー」が大量にあふれると、オリジナルのビジネスを邪魔して、ブランド価値を下げることにしかならず産業全体を衰退させる。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』ではないが、細い糸にあまりに多くのプレイヤーがぶら下るることで、全員が地獄に落ちてしまうのだ。
つまり、「模倣」を前提にみんなで切磋琢磨しながら市場を盛り上げるという考え方は、人口が増えていた時代だから通用した話に過ぎず、これからの時代は「寿命」を急速に縮める悪手なのだ。
関連記事
- バーガーキングがまたやらかした なぜマクドナルドを“イジる”のか
バーガーキングがまたやらからしている。広告を使って、マクドナルドをイジっているのだ。過去をさかのぼると、バーガーキングは絶対王者マックを何度もイジっているわけだが、なぜこのような行動をとるのか。海外に目を向けても同じようなことをしていて……。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - 「乃が美」と「いきなり!ステーキ」の共通点は何か 両社がハマった沼
「乃が美」と「いきなり!ステーキ」が苦戦している。贅沢品を扱う両社はなぜ低迷しているのか。共通点を探してみると……。 - キユーピーの「ゆでたまご」が、なぜ“倍々ゲーム”のように売れているのか
キユーピーが販売している「そのままパクっと食べられる ゆでたまご」が売れている。食べことも、見たことも、聞いたこともない人が多いかもしれないが、データを見る限り、消費者から人気を集めているのだ。なぜ売れているのかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.