売上大幅減なのに6年ぶり最終黒字 ミニストップ浮上のカギは「トップバリュ」と「ベトナム」:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/4 ページ)
決算書から日本経済を読み解く本連載。今回は業界4位のコンビニチェーンを運営するミニストップを取り上げていきます。直近の23年2月期では、売り上げを大きく減らしながら6期ぶりの純利益黒字化を達成しています。なぜでしょうか?
国外事業として残っているベトナムについても見ていきましょう。
ベトナム事業では、店舗数が15%増の138店舗に対し、売上高は46%増でした。店舗数の伸び以上に売り上げが伸びており、比較的好調だと分かります。中でも、野菜などの食料品も取り扱う新フォーマット店における売り上げの伸びが大きいようです。
営業利益は2億円の赤字でした。赤字が継続していますが、直近の第4四半期単体では、事業開始以来初の黒字化を達成しており、徐々に業績は改善傾向にあるようです。国内で苦しい状況が続く中、むしろベトナム事業の方が比較的堅調といえるかもしれません。
今後、ベトナムでは25年までに500店体制を目指して出店を進めていく方針を示しており、同時に23年度の単年度営業黒字化も目指していくなど、成長戦略を見だしているようです。とはいえ、同社の主軸はまだ数多くの店舗を展開する国内市場であることに変わりません。国内での抜本的な業績改善がないと、苦しい状況は継続するでしょう。
カギは「PB」と「ベトナム」
最後に今期(24年2月期)の業績予想を見てみましょう。営業利益で9億円、経常利益が11億円、純利益が9300万円とそれぞれ黒字になる計画を立てています。
店舗数を見ると、新規出店が10に対して、閉店が60となっており、50店舗の縮小が進む見通しです。店舗の日販は前期の41.4万円から43.6万円へと増加する計画を立てており、粗利率も29.6%から30.7%へと改善する見通しです。不採算店舗の撤退を進める一方で、既存店の販売力を増加させ、利益率の高いPB商品や店内調理商品を増加させていくと見られます。これまで商品売り上げは苦戦が続いていた上、物価高が進み節約志向が高まる中で、想定通り日販の増加を進めるのは非常に難しそうですが、どのような業績になっていくのか注目です。
あらためて全体を振り返ってみると、韓国事業の売却による6期ぶりの純利益黒字化を達成したものの、国内事業では既存店売上高が減少し赤字継続と、苦しい状況が続いています。特に苦戦しているのが通常のコンビニ商品です。コンビニ各社においてPBの重要性が増す中、トップバリュを中心とするPBの販売が堅調に推移していくのかに注目です。
また、新たな成長エンジンとなりそうなベトナム事業は、第4四半期単体で初の黒字化を達成するなど、堅調な業績となっています、今後、店舗数が大きく拡大していく中で、どのように成長軌道に乗せるかにも期待が集まります。
筆者プロフィール:妄想する決算
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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