1泊20万円! 電気と水を自給しているホテルが、稼働率90%の理由:週末に「へえ」な話(3/4 ページ)
既存のインフラを利用せずに、100%自給でまかなっているホテルがある。三島駅からクルマで1時間ほどのところにある「WEAZER 西伊豆」だ。電気や水をどのようにつくっているのか、開発した会社を取材したところ……。
ビジネスモデルの核は「販売」
WEAZER 西伊豆は、電気と水を100%自給している――。このことをウリにしているわけだが、最初からこの数字を達成していたわけではない。例えば、電気。通常、家に太陽光パネルを設置した場合、電気の自給率は30%ほど。残りの70%は既存のインフラに頼るわけだが、ARTH社は80〜90%ほどに高めていた。
この数字を聞いただけで、関係者は「おお、すげえな」と感じられたかもしれないが、ホテルを利用する客の立場になれば違ってくる。「もし自分が泊ったときにエアコンが止まれば……。もしシャワーの水が出なくなったら……」と心配するだろうし、もしそれが現実のものとなれば、楽しみにしていた旅行がだいなしである。ちなみに、いまのところ停電にはなっていないし、水が出なくなったこともないそうだ。
オープン日を遅らせたこともあって、その間にシミュレーションをどんどん繰り返していった。新しい技術を見つければ、それをどんどん試していった。そうすることで、90%→95%→98%→100%といった形で自給率を高めていった経緯があるのだ。
ところで、このホテルにはどのような人が泊まっているのだろうか。「1泊16万〜20万円」もするので、経営者や芸能人などが利用しているのかと思いきや、そうでもないらしい。大きくわけて3タイプの人が訪れていて、1つめは「若者」である。環境への意識が高くて新しいモノが好きな20〜30代の利用が目立つという。2つめは「外国人」。インバウンドだけでなく、日本で暮らす外国人も多いそうだ。
3つめは「企業または自治体」で働く人である。「え、出張でこんな高いホテルに? ウチの会社ではムリムリムリ」と思われたかもしれないが、ホテルを視察目的のために訪れる人が多いのだ。というのもそうしたプランを用意していて、「見たことも聞いたこともない形のホテルってどんなところなの?」といった人に対して、同社は施設の概要などを説明している。話をふむふむと聞いた人が、「おー、これいいねえ〜」となれば、ときに商談につながることもあるそうだ。
なぜこのようなプランを用意しているのかというと、同社は今後も「WEAZER」ブランドのホテルを増やしていく考えがあるから。しかし、自社のリソースだけでやっていく予定はない。ビジネスモデルの核の部分は「販売」だからだ。
視察に訪れた人たちから、どのような声があるのか。自治体からは「災害時の避難所として使えないか?」、企業からは「自社の遊休地に活用できないか?」「別荘として買うことができるのか?」といった声が寄せられている。ホテルがオープンして3カ月の間に、140件ほどの問い合わせがあったという。その中から話がとんとん拍子に進んでいけば、公共インフラを使わない建物が増えていく可能があるのだ。
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