「バーニーズ」はなぜ苦戦し、売却されたのか かつてはバブルに沸いた日本を象徴する存在:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/4 ページ)
セブン&アイが、高級セレクトショップ「バーニーズ ニューヨーク」を運営するバーニーズジャパンを売却。日本に進出した当初は勢いがあったが、なぜ苦戦するようになったのか。
新宿に日本1号店が誕生
1990年にはバーニーズ ニューヨークの日本1号店が新宿に誕生した。伊勢丹と提携して、バーニーズジャパンを設立。地下1階から地上9階まで、10フロアものスケールを持つ大型高級ファッション専門店は前例がなく、バブル景気に沸いた、日本の富の象徴のように映った。
その頃のアパレルは毎日のように高級ホテルを借り切って、新商品発表会、ファッションショーを行っていた。寿司、ローストビーフ、オマール海老のロースト等高級グルメがテーブルにずらりと並んだ、ぜいたく三昧の食べ放題の立食パーティーを開いて、来場者をもてなした。
そうした流れからして、今にしてみればバブルの塔のような、バーニーズ ニューヨークの大型店が誕生したのも必然だったといえるだろう。
その新宿店は、バブル崩壊、2000年前後のITバブル崩壊、失われた20年とも30年ともいわれる日本経済の長期停滞とデフレによって、売り上げが落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染拡大が決定打となって、売り上げが回復する目途が立たないとして、2021年2月28日に閉店した。
現在のバーニーズジャパンは、福沢諭吉の提唱で造られた日本初の社交クラブ「交詢社」をルーツとする、銀座の交詢ビルに本店が入居している。その他、六本木、横浜、神戸、福岡、西武渋谷と、6店舗を展開している。主な取扱商品は、イタリアを中心としたヨーロッパ及び米国の紳士・婦人、服・洋品雑貨で、約70%がプライベートレーベルを中心とした、直輸入品だ。
バーニーズジャパンの直近5年の決算を、決算公告から見てみよう(それぞれ2月期)。
- 2018年は売上高213.0億円、経常利益1.9億円
- 2019年は売上高208.1億円、経常損失0.6億円
- 2020年は売上高192.4億円、経常損失6.7億円
- 2021年は売上高125.5億円、経常損失28.1億円
- 2022年は売上高141.2億円、経常損失18.6億円
これを見ても分かるように、コロナ前から赤字に転落していた。もとから経営が悪化しているうえに、コロナ禍で絶望的に赤字が拡大している。
ただ、2022年は前年より幾分回復している。やり方次第によっては黒字に転換する可能性はあるが、セブン&アイではV字回復のビジョンが描けなかったのだろうか。
セブン&アイも全く無策だったのではない。
2021年8月27日には、初のコンセプトストアを、西武渋谷店B館1階にオープンしている。バーニーズジャパンが、百貨店のインショップとして出店した初めての店舗で、約80坪のスペースで、コンパクトにまとまっている。なぜこれまで実現しなかったのか。遅きに失した感がある。
なぜなら、セブン&アイは、そごう・西武も、バーニーズジャパンも、物言う株主の圧力に屈して、その後、手放してしまったからだ。せっかくの妙案だったのに、説明のしようがあったのではないのか。
もともと、セブン&アイは、2015年にバーニーズジャパンを買収した際には、2005年に傘下に収めていたそごう・西武との相乗効果を狙うとしていた。
そして、実際に西武渋谷店の店長を務めていた高橋幸智氏をバーニーズジャパンの新社長に迎えていたのだ(2019年に退任)。どうしても動きが遅く見えてしまう。
もっとも、2016年9月に東京ミッドタウンの道向かいにオープンした新しい旗艦店、六本木店が軌道に乗らず、テコ入れに追われて、次の手が打てなかったのかもしれない。
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