トヨタ新型「クラウン・スポーツ」の仕上がりと戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
トヨタが新型「クラウン・スポーツ」のプロトタイプ試乗会を開催した。乗車して分かった新型「クラウン・スポーツ」の狙いとは。
トヨタの新型「クラウン・スポーツ」のプロトタイプ試乗会が、富士スピードウェイのショートコースで行われた。
既にあちこちで絶賛のインプレッションが出ているが、それもむべなるかな。クルマの出来は相当に良い。2022年7月、トヨタは新型クラウンを「群で戦う」として、4つのバリエーションを同時に発表した。このクラウン・スポーツは、クラウン「クロスオーバー」に続く第2弾となる。
今後、セダンとエステートの2モデルの追加がアナウンスされている上、今回はあくまでもプロトタイプかつ、限られた周回数でのサーキットインプレッションということだ。よって、早計なのを十分承知で言えば、おそらくクラウン・スポーツは、「走り」において新型クラウンシリーズのベストモデルになるのではないかという期待を抱かせるものだった。
大胆に変わった新型クラウン
と、冒頭で先が読みたくなる話をチラ見せしておいて、話をぐーっと巻き戻す。今回のクラウンは同世代に4つのボディバリエーションが与えられた。22年7月の発表会でお目見えした、クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートの4種である。
何だってそんな大仰なことになったかと言えば、15代目クラウンが不発だったからだ。要するにもうまともなセダンを作っても売れない。「いやいや、15代目はまともなセダンじゃなかっただろう」というご意見はあるだろうが、それは14代目まで、お作法通りのセダンをずっと作り続けたにもかかわらず、台数的にジリ貧で徐々に首が締まっていったからであり、欧州プレミアム勢の後追いをして、いわゆるクーペライクセダンの方向に振ったのが15代目だ。
それが歴代に輪をかけて不発という結果に終わり、では一体どうすればいいのかと、考え抜いた結果が、ユーザーの好みに合わせて振り幅を付けた4バリエーションの展開となったわけである。それが「群で戦う」という意味である。
普通に考えて、ユーティリティセダンとしてど真ん中に位置するのがクロスオーバー。あくまでもセダン然としたフォーマル需要に向けたセダン。クラウン伝統の車型を復活させたエステート。ここまでは分かりやすいのだが、スポーツは一体どこを狙ったのかが、筆者的には微妙に腹落ちしていなかった。
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