トヨタ新型「クラウン・スポーツ」の仕上がりと戦略:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)
トヨタが新型「クラウン・スポーツ」のプロトタイプ試乗会を開催した。乗車して分かった新型「クラウン・スポーツ」の狙いとは。
後輪操舵を担うDRSに注目
物理的な特性だけでなく、電子デバイスもまた走りの性能向上に一役買っている。いわゆる後輪操舵を担うDRS(ダイナミックリヤステアリング)である。トヨタ自身の説明を抜き出すと以下のようなものだ。ついでに公式動画も紹介しておこう。
「ハンドル操作と車速に応じて後輪が切れる角度を制御することで、低速走行時の取り回し性、中速走行時の操舵応答性、高速走行時の安定性向上に寄与します」
DRSそのものは最近できたものではなく、20年以上前から採用されてきた技術だが、今回クラウンシリーズへの採用で明らかにその完成度が向上している。
DRSがもたらすメリットは、上にトヨタの説明を抜き出した通りなのだが、これまではメリットと引き換えに、どうしても挙動の不自然さが付きまとっていた。このクラウンシリーズからそういう「ありがた迷惑」な感じがすっかり消えた。正直かなり丁寧に乗ってもどこで効き始めたか分からない。
ちなみに作動角は、同位相で2度、逆位相で4度だそうで、ハンドリングにおける具体的な挙動を時系列で見ると、まずターンインが軽くスムーズ。旋回時のリヤの踏ん張り感が高い。脱出時の安定性が高い。という仕上がりになっていて、要するにくるくるとよく曲がるのに、安定感もある。相反する要素をうまく両立している。
またドライビングの失敗に対するリカバーも上手で、今回せっかくのサーキットなので、明らかに早すぎるタイミングでアクセルを大きく開けて、どの程度アンダーが出るかを試してみた。もちろんそんなことをすればアンダーは出るのだが、そこからアクセルを戻すと右足に連動して鼻先がちゃんとインに入っていく。
あるいは速すぎる車速でコーナーへ突っ込み、不安定な状態からブレーキを舐めてラインをイン側に寄せるような操作をしても姿勢を崩しにくい。ハンドリングの特性だけを見ればちょっとしたスポーツカーのレベルだと思う。
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