初任給を引き上げる企業が増えています。労務行政研究所の調査によると、東証プライム上場企業165社のうち41.8%が、2022年4月に入社した新卒社員の初任給を引き上げています。過去10年間の最高水準です。
産労総合研究所の『2022年度決定初任給調査』でも、初任給を引き上げたとする企業は41.0%あり、前年度を11.2ポイント上回っています。
初任給引き上げの動きに追随しなかった企業は今後どうなるのか、そして初任給引き上げの動きは全国に広がってゆくのかを考えてみました。
初任給はやはり重要
『マイナビ・日経2023年卒大学生就職企業人気ランキング』によると、文系総合ランキングの上位10社は次の通りです。
- 1.東京海上日動火災保険
- 2.ソニーグループ
- 3.ニトリ
- 4.日本生命保険
- 5.伊藤忠商事
- 6.ソニーミュージックグループ
- 7.講談社
- 8.損害保険ジャパン
- 9.バンダイ
- 10.味の素
これら10社の大卒総合職の初任給の平均値は26万2608円です。これに対し、前出の労務行政研究所調査による、東証プライム上場企業の平均(大学卒〈事務・技術・一般〉)の平均は21万6637円です。
また産労総合研究所調査による「大学卒、事務・技術」の平均は、格差をつけずに一律に決定している企業の平均で21万854円でした。産労総研は調査対象がより広範な、同社会員企業と上場企業です。就職人気トップ10企業や東証プライム企業に比べて偏りがなく、より日本全国の企業の実態に近いといえます。
調査時期が異なるのを承知の上で、あえて単純に比較すると、就職人気トップ10企業は東証プライム上場企業より21%高い初任給を払っています。東証プライム上場企業と全国の企業(産労総研調査)を比べると、2.7%の格差しかありません。
初任給において、東証プライム上場企業は特別ではありませんが、就職人気トップ10企業は特別な存在だといえます。学生側にとって初任給が就職先選びの重要な要素であることは間違いないようです。
図1を見れば分かる通り、大企業と中小・零細企業の賃金格差は30歳代以降の賃金の違いから生じており、若年者の賃金は大差ありません。これからは若年の段階から賃金格差が広がるかもしれません。
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