日本にも効率性賃金の時代が到来か
初任給引き上げの動きは、高い賃金を払うことは企業にとって効率的であり、高い買い物にならないという「効率性賃金」の考え方が日本でも広がってきたことを示すものでしょう。
効率性賃金とは、世間相場よりも高い賃金のことです。後述するような理由で、賃金を上げると労働生産性が上がります。しかしどこまでも上がるわけではなく、どこかで「もうこれ以上賃金を上げても労働生産性は上がらない」という飽和点に到達します。そこで決まる賃金のことを効率性賃金といいます。
もちろん日本にも、賃金は高い方が良いと考えている経営者はいます。しかしその逆の考え方をする経営者も一定数おり、それが顕在化して、いわゆるブラック企業が登場しました。
国際的には、賃金は高い方が企業にとって良いという考え方、つまり効率性賃金説が一般的です。例えば米国では、解雇が非常に広範に認められています。解雇が容易であるならば、これと引き換えに賃金カットを提示する経営者が現れても不思議でありません。しかし経営者は賃金カットを選ばないといいます。たとえ不況期であれ、ライバル会社より低い賃金を払って得をすることはないと考えているからです。
高い賃金を払うことはなぜ効率的なのか
高い賃金が企業に利益をもたらす理由は4つあります。
まずサボりや手抜き、不正行為などを防ぐことです。労働者は高い賃金を払ってくれる会社を追われたら、今までより低い賃金で働かなければなりません。しかし世間並みの賃金を払っている会社なら、辞めて他社に移っても賃金が下がりません。いつ辞めても良い状態です。
2つ目の理由は、社員が恩返ししようとすることです。人間には、思いやりには思いやりで返そうとする「互報性」という性質があります。このため相場より高い賃金をもらっている労働者は、その賃金をもらって当たり前だとは考えず、会社からの好意であると受け止めます。
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