「函館新幹線」ついに公約へ! 想定ダイヤをつくってみた:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(8/8 ページ)
4月23日の函館市長選挙で当選した大泉潤氏の公約は「北海道新幹線の函館駅乗り入れ」だった。この構想は3年前に本連載で紹介した内容とほぼ同じだ。しかし現在までの3年間で少し状況が変わっている。そこでフル規格新幹線車両の函館駅乗り入れ、分割、併結なしは可能か、ダイヤをつくって検証してみた。
このダイヤでは東京〜札幌間が5時間11分となり、18年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構が示した5時間より長い。また、東京〜函館間が4時間37分となり、現在のシャトル乗り換えより遅い場合がある。これは、東北新幹線内で参考とした列車が最速列車ではなかったためだ。また、すべての列車が盛岡駅で「こまち」の分割・併結を行う前提となっている。
「こまち」は1時間に1本だから、「はやぶさ」は「こまち」連結をやめて、東京〜札幌間の最速列車を目指してもいい。今後、新型車両による時速360キロメートル運転もあれば、東北本線の速度は上がる。東北新幹線は複線だから、時刻設定の変更はたやすい。問題は東京〜大宮間の混雑だろう。
理想的な所要時間にならなかった理由は、制作を急ぐために東北新幹線の最速列車をコピーしなかったせいだ。ただし、今回の焦点は、新函館北斗〜函館間のダイヤが成立するか否か、だから、その意味では検証できた。新函館北斗駅は片方のプラットホームが島式になるように準備されているから、完成すれば同時に停車できる列車は3本。このダイヤで実現可能だ。
北海道新幹線が札幌に延伸し、新函館北斗〜函館間に直通列車が走ったらどんなに便利になることか。ぜひ、このダイヤ、時刻表で思い浮かべてほしい。実現に期待しよう。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてパソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICETHREETREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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