コンビニの25倍も売れる コカ・コーラも期待するドリンクが「銭湯」を主戦場に選んだ真意:新市場を狙う(1/3 ページ)
コンビニよりも銭湯で売れるドリンクがあるのをご存じだろうか? 日本コカ・コーラが出資したリラクゼーションドリンク「CHILL OUT」だ。なぜあえて「銭湯」を主戦場に選んだのか、その真意を取材した。
コンビニよりも銭湯で売れるドリンクがあるのをご存じだろうか。日本コカ・コーラとI-neが設立した合同会社エンディアン(大阪市)が販売しているリラクゼーションドリンク「CHILL OUT(チルアウト)」だ。
チルアウトはGABA、L-テアニン、ヘンプシードエキス、ホップエキスの4つのリラクゼーションサポート成分を配合したドリンクで、一息つきたいときや就寝前のリラックスタイムでの飲用を提案している。
チルアウトの発売は2019年10月にさかのぼる。もともと飲料市場にリラクゼーションドリンクというカテゴリー自体が存在していなかったことに加え、パッケージデザインやサイズ感から、当時飲料市場で好調だったエナジードリンクと誤認されることも少なくなかった。そのため新しいドリンクの正しい認知醸成や飲用シーンの浸透に苦戦していた。
エンディアンはコカ・コーラ社が出資している企業でもあるので、その資金力を活用してテレビCMや看板広告などの展開も考えられたはずだが、コミュニケーション戦略としてまず選ばれたのは東京・高円寺の老舗銭湯「小杉湯」とのコラボだった。なぜ、影響力の面でマスマーケティングに劣りそうな銭湯と組むことにしたのか? チルアウトが小杉湯でコンビニの25倍売れるまでに至ったコミュニケーション戦略を聞いた。
なぜ銭湯だったのか?
エンディアンの共同代表職務執行者 渡邉憲さんはチルアウトの発売から、飲用シーンの設定のためにさまざまな施設とコラボし、テストマーケティングに取り組んできたと話す。キャンプ場やワーケーション施設など、リラックスシーンが入り込んでくるシチュエーションの一つに銭湯もあった。
「われわれの製品は新しいカテゴリーなので、正しい製品理解がマストです。銭湯は日本に昔からあって、すごくリラックスできる場所の一つだと思っていたので小杉湯さんにコラボの相談をしました。初回のコラボイベントでは、リラックス効果が期待できるテアニン成分を含んだお茶をお風呂に入れたのと、お風呂上りに飲めるようにチルアウトを配りました。実際に飲まれたお客さんからは好意的な意見をいただけました。SNSでの発信も他のテストマーケティングに比べて圧倒的に多く、ブランド認知・理解につながっている実感を持てました」(渡邉さん)
エンディアンが実施している調査によると、20〜40代でのチルアウトの認知率は60%弱程度だという。しかしその中で、リラクゼーションドリンクだと理解している割合は40%ほどになる。テストマーケティングを重ねていた20年ごろは、まだ「チルい」というワードも一般的ではなく、丁寧に市場啓蒙をしていかなければいけない状況だった。
小杉湯の来店客によるSNSでの発信や、小杉湯の販売拠点としての魅力などが理由となって、20年9月から小杉湯でもチルアウトを販売することに。初月からコンビニの約3倍の本数を売り上げたことに、渡邉さんは非常に驚いた。
「当時コンビニは渋谷エリア限定で展開しており、商業的なポテンシャルの高さを期待していた分、銭湯で初月にそんなに売れるのかと。信じられない気持ちでした。小売店では販売期間が増えても右肩上がりに売れていくわけではないですが、小杉湯さんは平均売り上げ本数がどんどん増えていって、マッチングの良さを実感しました」(渡邉さん)
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