この記事は、Yahoo!ニュースに3月29日掲載された「日本で「緊縮」財政が続くわけ」に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
3月28日に2023年度予算案が参議院で可決されました。そもそも、衆議院で2月28日に可決されていましたから、参議院で採決が行われなくても年度内の自然成立が決まっていました。
それはともかく、次年度予算は114.4兆円と、初めて110兆円を突破し、13年度から11年連続で過去最大を更新しました。こうした国の予算の肥大化、放漫財政を前にしてもなお、「緊縮財政が」との声も聞こえてくるわけですが、下のグラフ(「予算に占める各歳出項目のウェイト(%)の推移」)を見ると、そうした主張にも一理あるようにも思えてきます。
上図からは、「国民皆保険」「国民皆年金」がスタートする直前の1960年度には7割弱(68.6%)あった公共事業や教育、防衛などに回せるおカネが、高齢化の進行による社会保障の成熟化、それに伴う国の「借金」の増加によって次第に細っていき、2023年度予算では31.3%となっています。さらに、バブルの絶頂期の1990年度でもこうした裁量的な政策経費が4割弱しかなかった点に注目が必要です。
つまり、社会保障+国債費+地方交付税交付金といったあらかじめ使途が決まった歳出項目が重すぎて、防衛や教育など国の根幹にかかわる大切な政策に回せる自由なおカネが少ないという点では、「緊縮財政」といえるのかもしれません。
ただし、上記グラフは予算に占める各歳出項目のウェイト(%)ですから、予算総額を膨らませれば、ウェイトが同じでも自由に使えるおカネが増えることには留意が必要です。
もちろん、この場合には、69兆4400億円と過去最高を見込む税収をもってしても、なお35兆6230億円の新規国債を発行して歳入不足を穴埋めしている現実を直視する必要があります。
いずれにしても、こうした似非「緊縮財政」を脱し、教育など未来への投資におカネを回すには社会保障のスリム化が手っ取り早いと思いますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?
著者プロフィール:島澤諭
富山県魚津市生まれ。東京大学経済学部卒業後、経済企画庁(現内閣府)、秋田大学等を経て現在、関東学院大学経済学部教授。
政治や経済・財政、社会保障、人口動態に関するデータ・シミュレーション分析が専門。著書に、『教養としての財政問題』(ウェッジ)など。
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