地震や豪雨などの災害があった場合に、高齢者が効果的な行動を取れるかどうかは、日頃のつながりやコミュニティーの質に大きく左右されます。誰がどこに住んでいるか、どんな状態の人かを互いが知っていれば助け合いが可能ですが、そうでなければ放置されたり、助けが遅れたりといった事態になりかねません。事故や体調の急変の際も同様で、気付いてもらえる、すぐに知らせて助けが得られる環境かどうかが重要になります。
こんなケースがありました。
ある高齢者住宅のレストランで、予約をしているのに来ない人がいた。「予約をしているのに来なかった」ということがない人なので、一緒に食事を取る予定だった入居者たちが「これはおかしい。持病があるし…」という話になり、職員に連絡してその人の部屋まで一緒に見に行った。マスターキーでドアを開けると室内で倒れており、すぐに救急搬送。一命を取り留め、処置も早かったので後遺症も残らなかった――。
この件は、人命の救護で知事表彰を受けていますが、コミュニティーの力がとても分かりやすい事例です。分断された個人の集まりでは、こういう結果にはなりません。どんな人かが分かっている者同士が、日常的にお付き合いしていることで救われる命があり、オープンな関係が築かれているコミュニティーが「安全」や「安心」をつくっているということです。
最近は、見守りセンサーや緊急コールといったものもありますが、当然、これらには限界があります。見守りセンサーは基本的に、「24時間電源のオン/オフが押されない」「温度や照度に異常がある」「一定時間を超えて動きが感知されない」といった場合に作動するものですから、先ほど紹介した一刻を争うようなケースだと亡くなってしまうかもしれません。緊急コールも、当人がボタンを押すことができなければ意味がありません。(実際、先述のケースでは家の中に2カ所、緊急コールボタンが設置されていました)
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