幸楽苑の“低迷”はどうなる 「安くてうまいものを提供する」ビジネスの行方:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
幸楽苑ホールディングスの業績が低迷している。コロナ禍で苦戦していた外食産業は多いが、ライバルの日高屋は黒字化。このほかにも復活しつつある店が増えている中で、幸楽苑はどのような手を打てばいいのだろうか。
赤字の店舗を「いきなり!ステーキ」に
そんな「渥美チルドレン」の一人が、幸楽苑創業者の新井田伝氏というワケだ。
幸楽苑のビジネスモデルはゼロから新井田伝氏がつくり上げた。そして、その伝氏は渥美氏の考え方に大きな影響を受けている。ということは、同社の根底には「渥美イズム」が根付いているはずだ。
渥美イズムとは、「安くていいものを提供する」ということに尽きる。渥美氏が唱えた理論では、チェーンストアは「豊かな暮らし」を国民の大部分に提供する社会的インフラという位置付けだ。全国民が買えるものは、「安くていいもの」でなくてはいけないと言っている。
それを象徴するのが1992年、ペガサスクラブが日経新聞に出した「意見広告」だ。そこには、チェーンストア産業づくり50カ年計画として、全面にこんな「宣言」が大きく掲げられている。
『私たちは、2010年までに、物の値段は2分の1に下げます。これからが、真の“流通革命”の時代です』
かつて「290円ラーメン」を掲げた幸楽苑は、このような渥美イズムを最も分かりやすく体現していた企業の一つだったのだ。
そして、今後はさらに渥美イズムへの「回帰」が進んでいく可能性が高い。23年3月期の決算資料には今後の経営方針として、「創業者精神の再注入を行う」「外食の原点である魅力のある商品作りとメニューの絞り込み」とあるからだ。
事実、これまでやってきたことを見ても、幸楽苑が「安くてうまいを極めればなんとかなる」と考えているのは明らかだ。
それは幸楽苑が経営再建策として進めている「安くてうまい外食チェーンへの業態転換」である。
実は幸楽苑の低迷は今に始まったことではなく、17年には赤字が100店舗を超えて経営再建が叫ばれていた。そのとき、再生策として進められたのが「業態転換」である。
ペッパーフードサービスとフランチャイズ(FC)契約を結び、「いきなり!ステーキ」の運営を始めた。その後も、一人焼肉の「焼肉ライク」、唐揚げ専門店「からやま」、鍋料理店「赤から」とFC契約を締結して、この戦略を進めている。
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