覇者イオン、コスモス、カインズに勝てるのか 中堅中小の「合従軍」戦略:小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)
スーパー、ドラッグストア、ホームセンターの上位企業の多くがM&Aで規模を拡大してきた。上位企業による下位企業の買収というのが自然と多くなる一方、下位企業が同盟するように経営統合して対抗するというパターンもある。
「合従軍」は有効な戦略か?
北海道のイオングループはイオン北海道、及びマックスバリュ北海道、(20年に統合再編してイオン北海道となった)があったが、両社合算の売上、経常利益とアークスと比較してみたのが、図表6である。北海道でトップシェアを確保した後、本州にも拡張したアークスは、売上における差を広げたのは当然として、その利益率でもほぼ横ばいを維持し、下降傾向にあるイオン北海道と比べても順調な業績を保っているように見える。
東北におけるイオンの規模は統合の経緯や非上場化されたことで分かりにくくなっているが、20年度のイオン東北の売上規模が2068億円であること(マイナビ2024より)が分かっており、その時点でもアークス5569億円対イオン(北海道+東北合算)5267億円とアークスが十分に拮抗しうる規模と相応の収益力を維持していることだけは確かなようだ。
アークスは経営統合後の主要企業の業績を開示しているが、売上規模でラルズ1400億円、ユニバース1300億円が最大で、他の企業は数百億の規模なのである。相応ではあるが、北海道、東北で5000億円以上の事業規模があり、グループ売上5.9兆円のインフラを持ったイオンと、各社が単独で渡り合うことは難しかったであろう。合従連衡型の企業が規模拡大を実現しつつ、ある程度の収益率を維持できているということは、有効な戦略だということなのであろう。
そう思って、他の地域の合従軍である、アクシアルリテイリング、リテールパートナーズ、についても調べてみた。アクシアルは増収基調を維持しつつ、収益率も改善傾向、リテールパートナーズは、若干増収ながらも、収益率はマルキョウとの統合後、落込んでおり回復していないという状況だった。いずれも地域における存在感は圧倒的に大きくなったことは間違いないが、収益率についてはマチマチな結果となった。ただ、いずれも利益額としては確実に大きくなっており、投資余力が強化されたことは間違いない(図表7)。
圧倒的に規模に勝る競合企業に対して、中位、下位企業が合従連衡することで生き残るという策は悪くない選択肢のようだ。さらにいうなら、アークスはさらなる同盟の広域化を標榜(ひょうぼう)して、前述のリテールパートナーズ、中部地方のリージョナルトップであるバローと「新日本スーパーマーケット同盟」という、合算売上1.2兆円の巨大な連合体を立ち上げている。仮想敵イオンの背中ははるかに遠いながらも、地域ごとの局地戦においては十分な対抗軸となりうる存在である。
しばらく防戦一方のように見えていたセブン&アイのスーパーストア事業も背水の陣に追い込まれ、3年という年限を設けて捲土重来を狙うようであるが、正に眠れる獅子が起きたということならば、また業界環境は大きく変化するかもしれない。対抗軸としての「合従軍」は今後さらに各地で創設されることになりそうだ。
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