調査リポート
人的資本は状況が悪くても“あえて開示”すべき理由 「投資家の低評価」を恐れる企業の盲点
人的資本開示をするにあたって、現状を開示しても投資家にマイナス評価を付けられてしまうのではないか──。そんな不安を抱く担当者が多いようだ。できるだけ公開せずに他社の様子見に入るケースも少なくないが、投資家含む各ステークホルダーからの心証を悪化させかねない。どう対応すべきなのか。
企業における無形資産の価値は、年々増加している。中でも近年、注目度が高まったのが人的資本だ。有価証券報告書での開示が義務化されたこともあり、企業の成長に欠かせない重大な要素として、多くの企業が自社の人的施策や開示情報の見直しを図っている。
開示の潮流が本格化する中「自社の現状をまとめて開示しても、投資家に評価してもらえる水準ではない」と悩む企業も少なくない。リクルートマネジメントソリューションズ(東京都港区)が実施した調査では、現状の情報整備に満足していないとした担当者のうち、33.3%が「(自社の)課題が多く、公開することに躊躇(ちゅうちょ)」していると回答した。
現状を開示しても投資家にマイナス評価を付けられてしまうのではないか──。そんな担当者の不安が見て取れる。また、今後も毎年開示していくことから、結果が悪化した際にどう受け止められるかを不安に思う向きもあるようだ。
「できるだけ公開せずに他社の様子を見て、競合他社が開示した時に必要に駆られて取り組み始めるケースはよくある」と、同社主任研究員の荒金泰史氏は話す。しかし、開示に消極的であること自体が、投資家を含む各ステークホルダーからの心証を悪化させかねない。
離職率も高く、マイナス要素ばかり──どう開示すべき?
関連記事
- 人的資本経営で「やりがちだが、無意味な取り組み」とは 伊藤レポート検討委メンバーが語る
有価証券報告書での開示義務化に伴い、注目度が高まる人的資本開示。多くの企業が「どうしたら、他社に見劣りしない開示ができるのか」と悩み、試行錯誤しているようだ。しかし、アステラス製薬の杉田勝好氏は、他社との比較を「意味がない」と断じる。 - 「ISO30414取得」発表日には株価16%上昇──他にもあった「大きなメリット」とは 日本初の認定企業に聞く
人的資本の情報開示義務化を受け、多くの企業が開示を見越した取り組みを始めている。国外にも目を向けると、開示のための国際的なガイドライン「ISO30414」の認証を受けた企業が注目されている。認証を受けたことで、どのようなメリットがあったのか。また、どんなステップを踏んで認証に至ったのか? - 建設業の倒産が急増している「3つの理由」とは?
帝国データバンク(東京都港区)は、建設業の倒産発生状況についての調査・分析結果を発表した。工期長期化・人手不足・資材高の3つの主な原因のため、2022年度は3年ぶりに倒産が増加した。倒産件数は21年度と比較して19%上昇した。 - 「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」 両者を分ける“4つのスキル”とは?
日本企業はなぜ、「部下を育てられない管理職」を生み出してしまうのか。「部下を育てられない管理職」と「プロの管理職」を分ける“4つのスキル”とは? 転職市場で求められる優秀な管理職の特徴について解説する。 - 「優秀だが、差別的な人」が面接に来たら? アマゾン・ジャパン人事が本人に伝える“一言”
多様性を重視するアマゾン・ジャパンの面接に「極めてだが優秀だが、差別的な人」が来た場合、どのような対応を取るのか。人事部の責任者である上田セシリアさんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.