トヨタが反転攻勢に出た? 「手遅れ」と言う人が知らない、真の実力と新たな課題:高根英幸 「クルマのミライ」(6/7 ページ)
6月13日、トヨタが現在開発中の電動化技術などを報道陣に公開した。「Toyota Technical Workshop2023」と銘打ったイベントで、最新技術のおよそ9割を明らかにしたのである。最も注目が集まったのは……。
グループ内でパワー半導体の開発生産を目指す
テスラが採用して生産コストを大幅に削減したというメガキャストを、トヨタも導入する計画であることも明かされた。近年、車体の軽量化のために高張力鋼板だけでなく、樹脂化やアルミ合金など軽量素材への置換も進められている。
メガキャストは従来、構造部品であるクロスメンバーやビーム、ホイールハウスやそれらを連結させて補強する部材を一体で成形してしまうもので、アルミダイキャスト製とするため大きな金型とダイキャスト成型機を必要とする。
トヨタは従来86個もの部品を33工程かけて一体化させているが、これを1つの部品で1工程で実現するという。これらにより生産コストや工場への投資が2分の1に削減できるという。しかしテスラはボディに損傷があった場合、修理代が従来のクルマとは比較にならないほど高額になることで知られているが、その理由の一つがこうした特殊な生産方法にある。
従来のプレス鋼板溶接(写真左)とメガキャスト製法(写真右)の製品。メガキャストは前後のフレーム構造を一気にダイキャスト製法で作り上げる。アルミ合金なので材料費は高く、損傷を受けると部分的な修復は難しいが、工数を圧倒的に減らせることでコストダウンにつながる
従来86個の部品を溶接してつくり上げていたのは、鉄という強度とコストに優れた素材をうまく利用するためにプレスと溶接を組み合わせていたからだ。それは万一、交通事故などで損傷を受けた場合にも、ダメージのある部分を修復、交換すれば機能が回復するというメリットもある。
ボディの前後の構造体がダイキャストで一体成型となると、ボディが損傷を受けた場合、メガキャスト部分は丸ごと交換か廃車というケースが非常に増えるだろう。これにより自動車保険も車種による保険料率が上昇し、保険料の高さからユーザーが購入を敬遠する可能性も出てくる。
テスラのような新しモノ好きのユーザーだけを対象にしているなら、そうした構造や修理システムでも問題は少ないのだろうが、トヨタはEVでもより広いユーザーを対象にしていくのであれば、急激な車両の維持コストの上昇は信頼を低下させることにもなりかねない。やはりトヨタ車は購入してからも安心して乗り続けられるブランドでなければならないのだ。
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