未来の消費者とテナントに「選ばれる」ため、商業施設は何を担っていくのか:批判の種になったケースも(1/2 ページ)
近年、社会貢献や個性的なコンセプト、地域との調和などを打ち出す商業施設が目立つ。これからの時代に「選ばれる」施設にすることが必須だからだ。一方で、多様性を尊重するための取り組みが批判の種になったケースもある。
人々の動きを大きく変えたコロナ禍を経て、各地の商業施設にはにぎわいが戻っている。市街地の再開発などに伴い、大型商業施設や、オフィスなどを備えた複合施設の開発も活発だ。
一方、特に近年の再開発には長期的な視点を取り入れたプロジェクトが多いように見える。集客できそうな建物をただ造るだけではなく、社会貢献や個性的なコンセプト、地域との調和などを前面に打ち出している施設が目立つ。
その理由の一つは、少子化が加速する時代に「選ばれる」施設である必要性が増していることだろう。実際、これまでも集客に苦戦したり、テナントが埋まらずに「歯抜け」状態になってしまったりする施設が少なくなかった。顧客だけでなく、集客力のあるブランドなどに選ばれることも重要な要素だ。
建物を通じて何を“担う”か
そういった意味では、最近オープンした施設には、コンセプトとしてSDGsの視点が取り入れられているケースがほとんどと言ってもいいだろう。多くの企業が事業を通じて自然環境保護や社会問題への貢献に取り組む姿勢を明確にしている。顧客と直接関わる商業施設を開発する企業であれば、施設こそ自社の姿勢を具体的に表明する場として適していると考えられる。
例を挙げると、3月に三井不動産がグランドオープンさせた複合施設「東京ミッドタウン八重洲」(東京都中央区)がある。同施設ではエネルギー問題への取り組みとして、地下4階に大規模なエネルギーセンターを新設。非常時には同施設だけでなく、八重洲エリア一帯にエネルギー供給ができる体制を整えた。他にも、施設内には公立小学校なども整備しており、地域に対して一定の役割を担おうとしているように見える。
開業時点でオフィスが満床になっていたのも、複合施設としての機能性に加え、そういったコンセプトが他の企業に選ばれる要素になり得たということだろう。
また、5月に完成した複合施設「銀座高木ビル」(東京都中央区)は、上層階の9〜12階部分が“木造”という、非常に個性的な建物だ。9月下旬から、飲食店やサウナ施設などを順次開業する。木造部分は、東京・多摩地域で生育し、当地で生産・認証された多摩産材のスギ材を使用した。
強度やコストなどの問題から、木材を全面的に使用したビルを建設することはまだまだ技術的に難しいはずだ。それを乗り越えて国産材を使用していることからも、長期的な視点を持ち、覚悟を持ってサステナビリティの取り組みを推進していることがうかがえる。
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