レジ待ちのイライラ、店員への“圧”減少 ファミマ社長が語る「デジタルサイネージ」の副次的効果:併売に効果あり
ファミリーマートがデジタル戦略説明会を開催。店内への導入を進めているデジタルサイネージの効果について解説した。同社社長によると、売り上げ増だけではない副次的な効果があるという。
デジタルサイネージによるコンテンツ配信には、レジで順番を待つ客のイライラ解消といった副次的な効果もある――。ファミリーマート(ファミマ)のデジタル戦略発表会で、細見研介社長が明らかにした。
リアルとデジタルの垣根を超えたマーケティング施策の重要性が高まっていることを踏まえ、ファミマはデジタルサイネージの導入を進めている。
店内のレジ上に3連大型ディスプレイを設置。臨場感を高める音声と動画を配信している。主なコンテンツは、広告、ニュース、クイズ、アート、ミュージックビデオなどだ。2023年6月末時点で約4600店に設置されており、今年中には約1万店に拡大する予定だとしている。
デジタルサイネージを活用したメディア事業は、ファミマと伊藤忠商事が設立したゲート・ワン(東京都港区)が運営している。同社の速水大剛COOは「リテールメディア=販促メディアというイメージが強いが、本質はお客さまの店舗体験をより楽しいものにしていくメディアだ。だから、広告枠だけでなく番組枠を持っている。お客さまが楽しんでもらえるから注目率が高まる。注目率が高まるからメディアの価値が高まる」と説明する。
最近ではどういった施策が行われているのか。23年4月25日〜5月8日、「コカ・コーラ500ml」「コカ・コーラ ゼロ500ml」(各172円)と、「ファミチキ」(220円)を同時購入すると100円引きとなる「ファミチキにはコーク」キャンペーンを、全国約1万6500店舗で実施した。店内売場で販促物を掲示するとともに、デジタルサイネージの設置店舗でキャンペーン情報を訴求。同社のアプリ「ファミペイ」でもデジタル広告を配信した。
キャンペーン実施期間中の併売率は、実施前と比較して約6〜7倍となった(全店ベース)。また、デジタルサイネージ設置店舗における販売実績は、未設置店舗の118%だったという。
デジタルサイネージを設置することで、副次的な効果も出ている。ファミマの細見社長によると、利用客がデジタルサイネージに注意を向けることで、レジ待ちのイライラ解消につながっているという。また、レジ業務をしているスタッフに利用客の視線が向かないので、精神的な負担軽減にもつながっているのだとか。細見社長は「『サイネージがあることで店内の雰囲気が明るくなる』と加盟店のオーナーやスタッフにも好評だ」と強調した。
関連記事
- 「セルフレジにキレる老人」問題どうする? 模索続く大手企業 要注目の「スローレジ」とは
セルフレジやセミセルフレジが急速に普及している。一方で、適応できない利用客の存在も注目される。どうやって解決すればいいのか? - クライアントが広告業界の脅威に!? ファミマも参入した「リテールメディア」の破壊力
小売業がメディアを生み出し広告収益へとつなげていく動きが強まっている。米国のアマゾンやウォルマートが先行している。日本でもファミマが参入するなど、勢いが強まっている。 - 「1日1500万人」の来客を生かす ファミマが“広告メディア”になる日
コンビニ大手のファミリーマートは2021年9月、伊藤忠商事との共同出資により新会社「ゲート・ワン」を設立した。その目的は、ファミリーマート店頭にデジタルサイネージを新たに設置し、これを活用したメディア事業を立ち上げること。 - トライアルが「音声付きデジタルサイネージ」導入 福岡県の全店舗に
トライアルカンパニーは、ディスカウントストア「TRIAL(トライアル)」にデジタルサイネージ製品「インストアサイネージ」を導入したと発表した。 - セブン-イレブンが挑戦する「リテールメディア」 実証実験で見えはじめた“究極の強み”
小売業界で注目が高まりつつある「リテールメディア」。セブン‐イレブン・ジャパンは自社アプリを通じた広告配信に加え、22年末から店舗にデジタルサイネージを設置した広告配信の実証実験を進めている。ねらいと現状の取り組みについて、セブン‐イレブンジャパンのリテールメディア推進部 総括マネジャーの杉浦克樹氏と、協業パートナーのLMIグループ(東京都港区)の望田竜太副社長に聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.