“期待外れ?”の京阪電鉄中之島線はこのままなのか 再生のカギは2つ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
京阪電鉄中之島線は、大阪市の中之島地区を東西に貫く約3キロメートルの地下路線だ。大阪中心部の東西交通と、中之島西部地区再開発の期待を受けて建設されたが、その期待に十分に応えられずに今日に至る。しかし、今度こそ使命を果たせるかもしれない。
悲願の「なにわ筋線」開業は31年春
京阪電鉄と大阪市の期待を受けてつくられた中之島線は、輸送成績の数字を見る限り、期待に応えられない状態だ。そんな中之島線に、ついにチャンスが巡ってきそうだ。そのチャンスは2つ。いよいよ開業のメドが立った「なにわ筋線」と、中之島線自身の「延伸計画」だ。
なにわ筋線は1980年代に構想があり、当初は梅田から中之島を経由して難波を結ぶ地下鉄路線だった。その後、新大阪〜北梅田〜湊町(現・JR難波)・汐見橋(南海汐見橋支線)を結ぶルートが答申された。南側で関西国際空港へ足を伸ばすJR阪和線と、同じく関空特急「ラピート」を運行する南海電鉄につながる。つまり、なにわ筋線は関西国際空港をサポートする路線と位置付けられた。南海電鉄にとって、都会のローカル線となっていた汐見橋線の活用も魅力だった。
しかし数千億円とも見積もられた建設費が問題となり、着工できずにいた。この問題は前出のように、大阪府と大阪市が出資し、国も補助金も組み入れた第三セクターによる上下分離方式で解決した。なにより関西国際空港を活用すべきという、国と大阪府、大阪市の意向が決め手になった。ルートは当初の構想を変更し、南海側は汐見橋線ではなく、なんば駅から2つめの新今宮駅で接続するルートになった。
新大阪〜北梅田間は、JRの貨物線を旅客化して23年3月18日に開業した。それまでこのルートは関空特急「はるか」や紀州特急「くろしお」も使っていたけれど、旅客化開業後はおおさか東線が新大阪から延伸している。仮称だった北梅田駅は、正式には大阪駅(地下ホーム)となった。高架の大阪駅と地下ホームは少し離れており、東京駅と京葉線ホームの関係に似ている。
JRと南海の分岐駅として西本町駅(仮称)が設置される予定だ。大阪〜中之島〜西本町、西本町〜JR難波、西本町〜新今宮間の開業目標は31年春(30年度)となっている。1日当たりの利用者数は24万人で、このなかに中之島線の乗り換え客が見込まれる。
最新のトピックとして、なにわ筋線のうち南海電鉄の電車について、大阪駅から阪急電鉄が構想中の「連絡線」に乗り入れて新大阪駅に向かう可能性がある。これは23年7月12日に産経新聞が南海電鉄社長に実施したインタビューで明らかになった。
阪急電鉄の「連絡線」は、新大阪〜十三間の「新大阪連絡線」と十三〜大阪(地下)を結ぶ路線だ。どちらも古くからの構想だったけれども、なにわ筋線の計画がまとまりかけたころに阪急電鉄がなにわ筋線の接続案として名乗りを上げた。阪急電鉄は標準軌を採用しているため、JR在来線や南海電鉄の狭軌路線とは直通できない。
しかし阪急電鉄は、あえて狭軌を採用してなにわ筋線に直通したいと考えている。標準軌として大阪駅まで直通し、なにわ筋線と乗り換える形にすると既存の阪急神戸線・宝塚線・京都線の梅田駅乗り換えと大差ない。十三で乗り換える形であっても、阪急線だけで新大阪や大阪駅、さらに関空へ行けるルートは魅力的だ。
南海電鉄としては、大阪〜新大阪間はJR西日本の線路だから、JR西日本に線路の使用料を支払う形になる。それは阪急連絡線でも同じ。阪急経由のほうが安いなら阪急連絡線に直通したい、という考えがあるようだ。
京阪中之島線としては、大阪駅でJR西日本と接点を持てるだけではなく、十三で阪急主要3路線に乗り換え可能な点も魅力的だ。神戸、宝塚と連絡できる。これは中之島発展にも寄与するルートといえそうだ。
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