人的資本経営の要は「管理職」 現場と経営をつなぐマネジメントのポイントを徹底解説:会社全体で考える「人的資本」(3/4 ページ)
「会社全体で考える『人的資本』」と題して続けてきた本連載。人的資本経営を推進するのは経営者と人事部門だけではない。経営と現場をつなぎ、現場の人材(人的資本)をマネジメントすることで成果の創出が求められる管理職の存在が非常に重要となる。
管理職に必要な人材データ活用力
前述したように、私たち人間はどれだけフラットな目線を意識しても、誰もがバイアスを持って人を見てしまう。そのような場面では、客観的なデータを使って部下の強みを発見することも有効だ。筆者が所属するタナベコンサルティングでも「幹部適性診断」など人材の特徴を数値化して可視化できるアセスメントツールを活用することが多い。
また採用の場面でも、性格特性やストレス耐性、自社の文化とのマッチングを確認する目的でさまざまなアセスメントを実施しているはずだ。すでに社内にあるデータや新たに取得するデータを活用することで、部下の強みを発見しやすくなるだろう。
PDCAサイクルからOODAループで仕事をアレンジする
現在の管理職層の世代は、社会人になった当初から「PDCAサイクルを回せ」と言われて育ってきたのではないか。PDCAサイクルとは、綿密な計画を立案し、それを徹底的に実行していくことで継続的な改善を実現していくマネジメントサイクルである。
このサイクルは、高度経済成長期など「先が読みやすい時代」であればうまく機能していた。しかし、今は不確実性が高く先が読めないVUCAの時代であり「こうすれば必ずうまくいく」という答えが最初から分かっているケースは少ない。
そこで、まずは観察(Observe)して、仮説を立てて(Orient)、打ち手を意思決定し(Decide)、実践し(Act)、実践した結果をまた観察していく(Observe)というマネジメントを行っていくことが有効だ。このマネジメントサイクルをOODAループという。
さまざまな要因が複雑に関連している人的資本の価値を向上させるためには「こうすれば必ず価値が上がる」というルールや方程式があるわけではない。仮説を立て、スピーディーに実践して、結果を観察していくのが唯一の方法だ。うまくいかない場合も人材を責めるのではなく、仮説の検証結果が得られたと判断することで次につながっていく。
これからの管理職は、仮説の検証結果から仕事をさらにアレンジしたり、人的資本の配置(異動なども含む)を工夫したりすることで成果を上げていかなければならない。そのためには、前述したように人材に関するデータやエンゲージメントサーベイなどの結果などを活用できるスキルが求められるのである。
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