「ラウンドアバウト」ってなに? JR新宿駅で人がぶつからないように実験:経済の「雑学」(2/4 ページ)
多くの人が行き交う駅では、どのようにして人々の混雑を解消しているのだろうか。JR新宿駅ではこのたび、「人の流れ」を新たに作り出す試みが行われた。それは……。
ラウンドアバウトの仕組みを駅構内で活用
ラウンドアバウトとは、欧州によくある交差点形式のことで「環状交差点」と呼ばれる。中心とする箇所の周囲を一方向に周回する交差点で、信号を必要としない。停止しなくても衝突は起こらず、災害などで停電した場合でも、円滑な交通を維持できる効果がある。
人の流れも同じである。円滑にしなければならない。特に大きな駅では、混乱は避けなければならない。
そこでJR東日本では、新宿駅南口13・14番線階段付近のコンコースにおいて、ラウンドアバウト実証実験を実施した(7月10〜12日)。駅構内で歩行者を対象にしたラウンドアバウトの実証実験を行うのは、世界的に見ても珍しい試みである。
新宿駅では、朝の通勤時間帯(7時10分〜10時10分)において、人々の安全でスムーズな通行を目指している。13・14番線から各方面へ乗り換える利用者と小田急線乗り換え口からの利用者が交錯しないように、エレベーターを中心に反時計回りに一方通行となる実証実験を行った。
期間中は係員を配置し、誘導を実施。あわせて実施箇所周辺でポスターを掲示およびサイネージへの動画配信をし、ラウンドアバウトに誘導した。エレベーター周辺ではパーテーションを設置し、通行方向を表示した。
効果を検証するために、「LiDARセンサー」を設置。同センサーは、カメラ画像を用いずレーザー光で広範囲に渡って人の流れを計測でき、公共性の高い場所でもプライバシーを侵害することなく、データ収集を行うことが可能だ。
JR東日本では群衆マネジメント学を活用した混雑リスクの対策を検討するため、渋滞現象に関する研究を行っている東京大学大学院工学系研究科の西成活裕教授と連携。混雑のリスクを軽減するために、道路で注目されているラウンドアバウトを鉄道でも取り入れ、人の流れをスムーズにすることにした。
なお、今回のように実証実験はしなくても、鉄道の駅では人の流れをスムーズにするためにさまざまな取り組みが行われている。警備員や誘導員がいなくても、多くの人がぶつかることなく駅の中でスムーズに歩けるようにする試みは、特に都会の駅ならば誰もが見られる状態になっている。具体的に、どんな取り組みが行われているのだろうか。
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